2015.3.29 メディアを巧みに利用 【犯人に告ぐ】
■ヒトコト感想
警察内部の権力争いと、メディアを巻き込んだ連続殺人事件解決への流れを描いた作品。過去に、児童誘拐事件の犯人を取り逃がし失脚した巻島。新たに発生した連続児童殺人事件の捜査責任者となり、事態を打開するために、メディアを利用することになる。テレビに出演し、犯人に対して呼びかけを行う。いわば挑発的な行動をとるのだが、その流れが秀逸だ。
警察組織の内部的な理由と、メディアへ出ることの恐怖が描かれている。過去の誘拐事件の失態で、メディアのさらし者となった巻島が、今度はメディアを巧みに利用し、事件を解決へ導く。複雑に絡みあう警察組織の手柄争いも、もうひとつの見どころかもしれない。現実には巻島のような警官はいないが、メディアへでることの危険性も描かれている。
■ストーリー
川崎で起きた連続児童殺人事件。〈BADMAN〉と名乗りテレビに脅迫状を送りつけた犯人は3件目の犯行後、表舞台から姿を消す。膠着した警察は捜査責任者をテレビに出演させる大胆な“劇場型捜査”を決断する。担ぎ出されたのは過去に犯人を取り逃がし失脚した男・巻島。彼は犯人を挑発するが…。
■感想
児童誘拐事件を担当した巻島。手柄を立てるために自分たちだけで捜査した結果、犯人を取り逃がす。そして、さらし者のようにメディアから攻撃される。結果報告の際の、のらりくらりとした言い訳は、まさに現実に則している。
現実でも、誰がメディアのさらし者になるのか、議論されているのだろう。警察内部の権力争いのすさまじさ。そして、出世欲の塊の者たち。純粋に事件を解決することよりも、相手を追い落とすことや、自分の手柄とすることだけに心血を注ぐ警官の一面も描かれている。
新たに発生した連続児童殺人事件。捜査責任者として足柄から呼び戻された巻島は、メディアを巧みに利用する。卑劣な犯罪者BADMANを挑発する。その結果、事件は進展する。現実世界では、捜査責任者がメディアに登場し犯人を挑発するようなことはないだろう。
もし、そんなことをして犯人が自殺、もしくは新たな犯罪を犯した場合は、首が飛ぶ可能性もある。巻島の行動は、かなり行き過ぎている。が、物語として周りからの妬みを受けたり、出世欲にまみれた者からの言いがかりをつけられたり、巻島への風当たりは強くなる。
犯人へと繋がる手がかりを得た後の巻島の行動がちょっと疑問に思えた。あえて相手を追い詰めるようなことをメディアで発表する。捜査員を大量投入しての周辺のローラー作戦だが、それをあえて作戦前にメディアに発表する必要があるのか。
犯人の逃走にもつながるのでは?と思えて仕方がなかった。このあたり、最後までメディアを利用した上での犯人逮捕へ繋げたかったのだろう。ラストでは、警察内部の権力争いの激しさを物語るような、相手を追い落とす展開をにおわせている。
メディアを利用しての挑発は、現実的ではないが、強烈な面白さがある。
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