花とアリス殺人事件 乙一


 2015.9.22      どのようにして居場所を作るか 【花とアリス殺人事件】

                     
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■ヒトコト感想

アニメをノベライズ化した作品らしい。アニメ版は見ていない。物語としてイジメや引きこもり、果てはクラス内での呪い騒ぎなど盛りだくさんだ。有栖川徹子、通称アリスが転校してきた学校で、クラスメイトからの嫌がらせを受ける。そこでアリスは嫌がらせに対して対抗するでもなく、逃げるのでもなく、気にしないという態度をとる。

もう一人の主人公である花は、ある出来事の真実を知りたくないために引きこもり状態となる。アリスと花が偶然にも家が隣同士ということで、ふたりは親密となる。ユダが殺されたという怪しげな言葉と、クラスに蔓延する不吉な儀式。ミステリーの要素がありつつ、最後は現実的でさわやかなラストとなる。

■ストーリー

石ノ森学園中学校に転校してきた有栖川徹子(通称:アリス)。しかし、転校早々クラスメイトから嫌がらせを受けるようになる。彼女の席に呪われた噂があるようだ。そんなある日、アリスは、自分の隣の家が『花屋敷』と呼ばれ、怖れられていることを知る。彼女は、ある目的をもって花屋敷に潜入するが、そこで待ち構えていたのは、不登校のクラスメイト・荒井花(通称:花)だった。

■感想
転校してきてそうそう、周りから避けられるアリス。アリスが座る椅子の下には、魔法陣が描かれている。アリスの後ろの席も同じく空席。本来ならばそこにいるはずの花は引きこもり状態。アリスの周辺で巻き起こる奇妙な現象を解明することから始まる本作。

クラスで魔術的なことが流行っており、アリスの席に以前座っていたヨダという人物の行方を探すことが始まる。いじめを連想させるような流れかと思いきや、主人公のアリスの考え方が軽いので、クラスメイトの行為はサラリと受け流されている。

物語は軽いようで一部シリアスな部分がある。花とヨダの関係は歪だ。幼馴染でお互いのことを気にしながらも、花が渡した婚姻届により二人の関係はギクシャクしだす。呪われた席に座ったアリス。その呪いの原因と思わしきものを作った花。

クラスメイトには誤解を解いたとしても、そこには別の複雑な事情がある。このあたり、クラスでポジションを得るために、どのようにして自分の居場所を作るか、というのがポイントだ。

物語の後半では、花とアリスのヨダを探す冒険が描かれている。ヨダ光太郎は生きているのか、死んでいるのか。花が仕組んだイタズラが元で死んでしまったのか。クラス全体に蔓延する呪いの原点とも言うべき存在のヨダ。

ふたを開けてみたら、なーんだというオチになるかもしれないし、シリアスで不幸な結末となるかもしれない。物語は最後まで気が抜けない。アニメ映画として描くにはそれなりに魔術のシーンなどインパクトがあるのだろうなぁ、と思える流れだ。

イジメや引きこもりを扱う物語にしては、前向きな雰囲気がある。



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