はじまりのみち


 2015.7.7      昭和映画ファン必見 【はじまりのみち】

                     


■ヒトコト感想

映画監督・木下惠介を描いた作品。正直、木下惠介は知らない。ラストで木下が監督をした映画が流れるのだが、かろうじて「二十四の瞳」はタイトルを聞いたことがある程度だ。そんな状況で見ると、よくわからないが、戦時中の日本の映画の状況がよくわかる気がした。作品としてすぐれていたとしても、国民の戦争に対する熱量を低下させるような作品は許されない。

木下はそんな軍部の圧力に嫌気が差し、監督を辞めようとする。母親を浜松に疎開させるために、リアカーを引きながら山道を歩く。メインはこの旅なのだが、なんとも言えない哀愁漂う作品となっている。旅を手伝う便利屋や木下の兄など、辛く苦しい道のりを歩き続けることに、何か言いようのない信念のようなものを感じてしまう。

■ストーリー

日本映画史を代表する名匠・木下惠介監督の若き日の物語を描いた感動作。映画界に政府から戦意高揚の国策映画作りが要求された戦中。木下惠介は松竹に辞表を提出し、病気で倒れた母が療養する浜松市に向かう。

■感想
政府からの国策映画作りの要請に嫌気が差し、映画監督を辞めた木下は、病気で倒れた母親の療養のため、リアカーに母親を乗せて浜松まで運ぼうとする。戦争真っただ中での移動の困難さと、リアカーに病人を寝かせたまま山道を登ることの過酷さが描かれている。

木下が母親をリアカーで運ぶ助けとして、兄や便利屋の存在がある。兄はまだしも、金で雇われた便利屋は過酷な道のりに弱音を吐く。このあたり、過酷な道中でありながら、便利屋のキャラクターにお笑い要素があるので、妙に明るく楽しい物となっている。

山道をすすむ中で、雨が降ればびしょ濡れになりながら進んでいく。リアカーに病人を乗せるというのは、かなり病人にとっても過酷なことなのだろう。母親は、顔には傘をさしながらも、泥水が跳ね顔にかかる。そして、強烈なインパクトがあるのは、皆が黙々と目的地に向かってすすみ続ける部分だ。

便利屋にしても、文句を言いながらも宿屋の娘たちと仲良くなると、途端に元気をだし、さも根性があるようなふりをする。戦争中という暗い雰囲気の中で、ひとりひとりの人間の生命力というか、明るさを感じずにはいられない。

ラストでは母親の助言により、木下は映画監督へ復帰しようとする。そして、現在までに木下が撮った映画作品が次々と映し出される。なんとなくだが、「ニューシネマパラダイス」的な感動がある。白黒の映像でありながら、時代を反映した作品の数々

かなりの作品を撮っているのだが、自分が知っているのはごくわずかだ。もしかしたら、木下作品のファンであれば、感動してむせび泣くかもしれない。一般的にどの程度の知名度なのかわからないが、木下監督を知らなくとも楽しめたのは確かだ。

昭和映画ファンならば間違いなく楽しめることだろう。



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