2017.10.12 底抜けに明るい肉子ちゃん 【漁港の肉子ちゃん】
漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫) [ 西加奈子 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
肉子ちゃんの娘であるキクリンが主人公の本作。漁港近くの焼肉屋で働く肉子ちゃん。本名は菊子だが太っているからみなから肉子と呼ばれる。肉子ちゃんのキャラが良い。キャバクラ勤務をくりかえし、男に騙され流れ着いた先が北の町の漁港。太って明るくてちょっと頭のたりない中年女は容易に想像できる。
頭の中ではすぐに肉子ちゃんをイメージできるだろう。娘のキクリンから見た肉子ちゃんとキクリンの周辺で巻き起こることが描かれている。肉子ちゃんは太っていて不細工だが、キクリンは美少女であり小学校のクラスでも目立つ存在である。キクリンと肉子ちゃんの特殊な生活というのは、読んでいて楽しくなるのは間違いない。
■ストーリー
男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。
■感想
肉子ちゃんとキクリンの母娘の物語。若いころはキャバクラで働き、男に騙され、町を転々とする。歳をとるとキャバクラに雇ってもらえず焼肉屋で働きながらキクリンを育てる肉子ちゃん。この肉子ちゃんのキャラが良い。底抜けに明るいがバカなことをくりかえす。
漢字を細かく分けて説明するが、その説明がまったく意味をなしていない。キクリンは常識人だが、肉子ちゃんのことをたまに恥ずかしく思ってしまう。肉子ちゃんの姿は頭にイメージしやすいキャラクターかもしれない。
キクリンは肉子ちゃんに似ても似つかない美しい顔をしている。そしてクラスでもそこそこ人気がある。キクリンのクラス内で女子ならではの派閥争いやイジメのようなものもある。キクリンはイジメに加担しないが、親友がキクリンをおとしめようとし、さらには周りから逆襲され孤立してしまう。
このあたり、小学生とはいえ女子の恐ろしさを感じずにはいられない。肉子ちゃんは何も気にしない能天気な性格だが、キクリンは表情に出さずも、それなりに人間関係に苦心している。
キクリンの出自が後半になると語られることになる。案の定、肉子ちゃんが若いころに出会った美しい女性が関係している。キクリンの人生は小学生にしてはハードだが、肉子ちゃんと一緒に生活することで、大きく助けられている。
バカなことを言い、たまにキクリンが恥ずかしくなるようなことをするのだが、それでも肉子ちゃんの明るさに大いに助けられているのだろう。漁港にいそうな太って底抜けに明るく不細工な食堂のおばちゃんといった感じだろうか。
肉子ちゃんは、実在しているかのような存在だ。
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