グリード 上 真山仁


 2016.6.17      鷲頭がアメリカを食い物にする 【グリード 上】

                     
グリード(上) [ 真山仁 ]
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■ヒトコト感想
サブプライムローンによるリーマンショックを描いた作品。ハゲタカシリーズとして鷲津が大活躍する。今まで金の力で好き勝手やってきたアメリカのファンドが、一瞬にして地に落ちる。圧倒的な財力をもつストラスバーグすらも鷲津に助けを求める状態となる。リーマンショック前夜をリアルに描いているように思えてしまう。

誰もが危険を認識していながら、あまりに巨大化しすぎて言い出すことができないサブプライムローンの危機。鷲津たちは権力に物を言わせて強制力を働かせる者たちに対して逆襲する。上巻ではまだその布石しかない。が、下巻にかけて崩壊していくアメリカ経済と金持ちたちへ、鷲津がどのように逆襲していくか、楽しみで仕方がない。

■ストーリー

リーマンショック直前、鷲津政彦はアメリカ経済を長年牽引した超巨大企業、アメリカン・ドリーム社の奪取を目論んでいた。敵は圧倒的な財力を持つ“市場の守り神”サミュエル・ストラスバーグ。巨大投資銀行でサミュエルを担当するジャッキーは莫大な利益に熱狂する社内で異変に気づき、ニューヨークに飛ばされた新聞記者の北村悠一は鷲津に巨大破綻の到来を示唆される。

■感想
リーマンショック直前を描いた本作。ハゲタカシリーズとして鷲津が大活躍する。サブプライムローンの崩壊により激変するアメリカ経済。その混乱に乗じて巨大企業を奪取しようとたくらむ鷲津。今までの流れでは、アメリカの巨大ファンドに良いようにやられてきたが、本作では鷲津の逆襲が始まる。

莫大な財力をもつストラスバーグは強気にでているが、鷲津に支援を求める。鷲津が断れないように、あらゆる手段を使い、鷲津を仲間に引き入れようとする。FBIまでも使い、逮捕をチラつかせながらの激しい攻防となる

今回の鷲津は、ひとつの企業をどうするかというより、ストラスバーグとの対決がメインだ。仲間を逮捕され、助けるために協力するフリをする。そこからリーマンショックのXデーまで、鷲津がどのような行動をとるのか。

投資銀行に勤務するストラスバーグお気に入りのジャッキー目線で、鷲津の不気味さやアメリカ経済崩壊の顛末が描かれている。ストラスバーグやジャッキーは尻に火が付いた状態であり、1秒を争うように必死に打開策を練っているが、鷲津は悠然と雲隠れしたりもする。鷲津が何を考えているかわからないだけに、興味がつきることはない。

日本の新聞記者・北村の視点から、リーマンショックと鷲津の関係が描かれている。直接利害関係がない者の視点から鷲津を見ると、何を考えているのかわからないというイメージがある。それでいて、神出鬼没で何を始めるかわからない。

扱う金額は桁違いで、日本のハゲタカと恐れられ忌避される鷲津がどのような行動をとるのか。あの常に悠然と構えていたストラスバーグが、必死に助けを求める姿など、想像もしなかった。それほどリーマンショックの影響はでかいということだ。

下巻で鷲津が大活躍するのは容易に想像できる。



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