ゴールデンボーイ  


 2017.2.22      少年と元ナチの老人の壮絶な駆け引き 【ゴールデンボーイ】

                     
評価:4
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■ヒトコト感想
「刑務所のリタ・ヘイワース」と「ゴールデンボーイ」という二つの中編が収録されている本作。どちらも読者を引き付ける強烈な引きの強さがある。30年かかって脱獄に成功した男の話は、その粘り強さと、どのような苦境に陥っても一発逆転を信じて疑わない男の強い信念を感じた。

ゴールデンボーイについては、主人公のトッドと元ナチスの男の駆け引きのすさまじさや、トッドの秘密がいつ公になるかというドキドキ感がすばらしい。結末を読むまでは、もしかしたらトッドはすべての悪事をみごとに隠したまま、幸せな生活を送るのでは?と思えるほど、偶然の要素があるにせよ、うまく人生を切り抜けていた。どちらの中編もすばらしい引きの強さがある。

■ストーリー
トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。

■感想
「刑務所のリタ・ヘイワース」は、冤罪で服役された男が30年かけて脱獄に成功した話が描かれている。最初は刑務所内の古参グループから狙い撃ちにされるが、そこでも男は持ち前の我慢強さと、決して負けない強い心で対抗していく。

刑務所の所長に対しては、元銀行員の知識を活かして節税対策をアドバイスすることで、刑務所内に図書館を作るなどの自由が認められる。実直なほどひとつのことに集中する男は、何にも負けず最後までやり通してしまう。1年で数センチしか掘り進めない状況で、数十年かけて壁に穴をあけて脱獄してしまうとてつもない男の物語だ。

「ゴールデンボーイ」はすさまじい引きの強さがある。少年トッドが元ナチの老人を見つけ出し、正体をばらすと脅す。そこから少年と老人の交流が始まり、さまざまな障害を乗り越えながら後に引くことのできない事件を起こす。

トッドの抜け目なさに最初は押され気味の老人が、そこからトッドを脅すようになり、最終的にはお互い相手の弱みを握り、相互補完関係となる。トッド自身は何不自由ない生活を送り、将来が有望な青年へと成長していくのだが…。二人の駆け引きが絶妙だ。

トッドと老人の秘密が暴かれそうになるピンチが何回か訪れる。そのたびにトッドと老人は機転を利かし、または幸運に守られることによって事態を乗り切っている。今度こそは絶対絶命では?と思われる場面でもトッドは乗り越えてしまう。

老人が入院し、老人が元ナチの将校だったとマスコミに暴かれてからどうなるのか、すさまじい引きの強さがある。トッドはいったいどうなるのか。それまで巧みにトッドたちの策略にはまってきた者たちが、その歪みに気づいていく。

ラストまでわき目をふらず、ひたすら読み続けることができる作品だ。



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