2016.2.21 シリーズ4作目はテンションが低目 【銀翼のイカロス】
銀翼のイカロス [ 池井戸潤 ]
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■ヒトコト感想
半沢直樹シリーズも4作目となると、若干ネタ切れ感がでてきた。本シリーズの売りである爽快感ある倍返しが、本作ではあまりみられない。半沢自身が強烈に追い込まれるというのではなく、銀行自体が大きな岐路に立たされ、頭取が決断を迫られるという流れだ。黒崎検査官や近藤なども登場し、シリーズとしての面白さは保たれている。が、銀行内部での激しい争いは、いつもよりはテンションは低めだ。
それぞれが出世争いにあけくれ、半沢だけが真実へ突き進むパターンではない。今回は経営危機に陥った航空会社を再生させる物語なのだが、現実と一部リンクする部分がある以外は、特別なインパクトはない。やはり架空の物語の方が、激しい展開が可能となるのだろう。
■ストーリー
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?
■感想
半沢直樹シリーズの4作目。半沢が無事銀行に復帰し、そこから新たに航空会社の再建策の策定を命じられる。JALの経営破たんをイメージしての流れなのだろう。国が手助けするのか、それとも銀行が債権を放棄するのか。半沢の前には、航空会社再生のタスクフォースや、いつもの黒崎検査官、そして内部の対立者たちが立ちはだかる。
銀行内部での権力争いで、半沢の邪魔をしようとするのは今までで描いたパターンとほぼ同じだ。今回は、今までほどのいやらしさはない。それは結局のところ、銀行自体の利益を考えると同じだからだろう。
タスクフォースのメンバーは強烈ないやらしさを誇っている。リーダーである弁護士はもとより、タスクフォースを立ち上げた議員なども権力をふりかざし、半沢へ迫る。といっても、半沢はいつもどおり自分が納得しないことには反発し続ける。
どれだけ脅されようとも半沢の信念は変わらない。銀行の利益を考えての行動であるために、タスクフォースに肩入れする銀行内部の者たちも少し歯切れが悪くなる。前作までと明らかに違うのは、半沢と対立する者の中で、対立し続けられない者の存在があることだろう。
航空企業という公共性のある企業が破たん直前になった時、銀行は債務を放棄すべきなのか。確かに銀行は苦しくなると公的資金が注入され、その後は莫大な利益を生み出している。なので、少しくらいはという話なのかもしれない。
半沢個人が攻撃されピンチに陥り、一発逆転のネタをつかみ相手に逆襲するというパターンが今回はない。全体的にぼやっと反撃していつのまにか主役は半沢から銀行としての決断を迫られた中野渡頭取にうつっている。
シリーズも4作目となると、今までのテンションを保つのは難しいということなのだろう。
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