ゲノムハザード ある天才科学者の5日間


 2017.11.14      記憶の上書き 【ゲノムハザード ある天才科学者の5日間】

                     
ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [ 西島秀俊 ]
評価:3

■ヒトコト感想
天才科学者の石神が自宅で殺されている妻を発見することから物語は始まる。物語の序盤は、石神の周辺で何が起きているのかわからない状態が続く。死んだはずの妻の声が受話器から聞こえる。記憶が混濁し、何が真実かわからない。そして怪しい組織に追われ逃げ惑うことになる。この段階では、観衆は石神と同じように不可解な状況に戸惑うしかない。

それが韓国の女性記者と行動を共にしていくにつれ、真実が明らかとなる。人の記憶が上書きされるという仕組みは面白い。上書きには期限がある。上書きされたのが石神の記憶で、本来はジヌという韓国人だった。記憶の上書き以外にも、石神を陥れようとする様々な仕掛けにより物語をミステリアスにしている。

■ストーリー
ある日、石神武人は自宅で殺された妻を発見する。呆然としながら突然鳴った電話に出ると、受話器から聞こえたのは、傍らで冷たくなっているその妻の声だった―。この日を境に彼には別の記憶が混在するようになる。そして辿り着いた事実それは―本当の彼は韓国人科学者オ・ジヌだということ。

彼の記憶は“上書き"されていたのだ。そしてなぜか彼を捕えようとする、警察を騙る男たち。正体不明の女性記者(キム・ヒョジン)と真実を追ううちに、彼は彼の妻を装う女(真木よう子)と出会い―誰が、何のために記憶を奪ったのか?なぜ、追われているのか?―5日後、すべての記憶が消える。

■感想
石神の状況は強烈だ。自宅で殺害された妻を見つけるが、受話器からその妻の声が聞こえる。そして何者かに追われる。身に覚えのない状況と、不可解な出来事。それらを想定すると何者かが石神を陥れるために、すべて仕組んでいたのかと想像できる。

韓国の女性記者キムの助けを借りながら真実を見つけ出そうとする石神。キムが石神の言うことを信用せず、現実的な答えで決着をつけようとするあたりが面白い。石神が妻に隠れて別の結婚相手がいただとか。それを聞いて混乱する石神もまた良い。

中盤以降になると石神の研究内容が明らかとなる。そして、今の石神と本当の石神の顔がまったく別人だと分かった時の混乱はすさまじい。何か大きな力が働いているとしても、自分がまったくの別人だと知らされた時の混乱はすさまじいものがある。

アイデンティティなどすべてを否定されたことになり、自分はいったい何者かわからなくなる。そんな状態でも、石神を追いかける組織からすべての真実を聞かされることになる。

記憶を上書きし、全く別人になる。石神は本当はジヌという韓国人だった。ここでキムとの絡みが活きてくるのだろう。元は韓国人だったが記憶を上書きされたことで石神に成り代わり、その後の行動は組織の圧力や、その他の者の巧妙な策略により石神を石神だと信じ込ませるような流れとなっている。

石神の記憶が消え去ると、そこには韓国人のオ・ジヌしか残らない。妻を装った女の正体や、何のために記憶を奪ったかなど、すべてはラストに明かされることになる。

記憶の上書きというのは新しい発想だ。



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