2016.4.17 田舎独特の親密さ 【ふしぎな岬の物語】
ふしぎな岬の物語 [ 阿部寛 ]
■ヒトコト感想
岬の突端で「岬カフェ」をひらく悦子。店の隣に住む甥の浩司。この二人を中心としたほのぼのとした物語。岬の村内での濃密な人間関係と、助け合いの精神。そして、強烈に強調されるのは、悦子の純粋で優しいキャラクターと、後先考えず悦子のこととなると沸点が低くなる浩司だ。悦子の聖人的なふるまいが強く印象に残っている。
夜中に店に泥棒が入ると、泥棒に対してレジの金をすべてやると言う。泥棒が逆に恐縮するほど、相手のことを思いやり、泥棒すらもなんとか助けようとする。すべての村人から慕われる悦子。浩司と悦子の関係が、なんだかよくわからないまま、浩司が伯母に恋心をいだいていることに違和感を覚えた。岬の村でのほのぼのとしたやりとりを楽しむ作品だろう。
■ストーリー
美しい海を望む岬村。その岬の突端にあるカフェ「岬カフェ」には、店主の柏木悦子(吉永小百合)がいれるコーヒーを目当てに里の住人たちが集まってくる。店の隣に住む甥の浩司(阿部寛)は、何でも屋を営みながら悦子を献身的に見守ってきた。そんな穏やかな日々が営まれていたある日、常連客の娘で音信不通だったみどり(竹内結子)が数年ぶりに帰郷する。
久しぶりにみる彼女は何かに傷ついているような様子。30年来の常連客、不動産屋のタニさん(笑福亭鶴瓶)は悦子と浩司の一番の理解者であったが、別れの時が近づいてくる…悦子と住人たちの穏やかに暮らしてきた里に変化の風が吹き始めた……。
■感想
舞台は千葉の港町。岬の突端でカフェを経営する悦子と、過去のトラウマを引きづり、夜、灯台代わりにライトを振りつづける男・浩司。二人は伯母と甥の関係でありながら、浩司の言葉の節々には「えっちゃん」という、親しみを込めた言葉がでてくる。
物語の中盤では浩司の悦子に対する思いが、これでもかと噴出している。このあたり、悦子の年齢を考えると違和感を覚えずにはいられない。浩司からすれば母親くらいに歳の離れた関係ながら、悦子に対する思いは、異常とすら思えてくる。
悦子と浩司のキャラクターがはっきりと描かれている。悦子は落ち着いた優しげなキャラクターで、誰に対しても愛を注ぐような人物だ。典型的なのは、カフェに忍び込んだ泥棒に対して、話を聞くうちに逆に泥棒のことを心配したりもする。
心配のあまり、レジにあるお金をすべて泥棒に渡し、さらには店に飾ってある大事な絵を売ればお金になるとまで言う。すべてにおいて愛に満ちたような悦子に対して、浩司は粗暴なキャラクターを貫いている。特に悦子に関してのことであれば、大暴れするのが当たり前になっている。
悦子の過去が明らかになる終盤、そこで大きな事件が起こる。浩司の幼馴染であるみどりが帰ってくると、そこからみどりと浩司の関係が親密となる。悦子への浩司の気持ちの変化と共に、岬カフェで大きな事件が起こる。
スピリチュアルな雰囲気もあり、さらにはほのぼのとした田舎の良さにあふれている作品だ。都会で暮らしていると、ついつい忘れがちな地域住民の温かさを思い出さずにはいられない。自分の場合は、祖母の実家を思い出してしまった。似ているわけではないが、周辺を包む雰囲気が近いので思い出したのだろう。
このふんわりとした、田舎独特の親密さが良い。
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