振り子


 2016.4.7      パラパラマンガがすばらしすぎる 【振り子】

                     
振り子 [ 中村獅童 ]

■ヒトコト感想
鉄拳原作のパラパラマンガを実写化した作品。あえて実写化する必要があったのだろうか。内容的にはごくありふれたものだ。ただ演出として、その時代時代のヒット曲が印象的に流れている。となると、曲に思い入れのある人は、ノスタルジックな気持ちとなり、感動を引き起こすのだろう。時計の振り子をそのまま時の流れとみなし、残酷な時の流れが人を不幸にする。

エンディングで、原作となった鉄拳のパラパラマンガが登場するのだが、正直、こちらの方が数倍良い。というか、独特な絵柄とパラパラマンガという手法だからこそ感動したのであって、実写化してしまうと、ありがちな昭和の家族ドラマとしか見えてこない。なんでもかんでも実写化すべきではないというお手本のような作品だ。

■ストーリー

1976年 ひょんな事から出会った大介とサキ。これが二人の歩む「数奇な運命」のはじまりだった―。商店街の人々に見守られ、夢だったバイク屋を経営しながら暮らしていた大介一家。ところがある日、バイク屋が倒産。

家族の歯車が狂い始める。そんな矢先、サキが倒れて寝たきりの状態に…。大介はサキを元に戻そうと懸命に努力するが二人に待っていたのは予想外の結末だった…。昭和から平成…「振り子時計」が刻んだ夫婦の歴史。そして、二人が夢見た21世紀に待っていたのは―。

■感想
エンディングに鉄拳原作のパラパラマンガを流してしまったのが失敗だったかもしれない。実写映画と原作パラパラマンガでは、あまりにパラパラマンガがすばらしすぎて、相対的に映画がダメという印象になってしまう。

パラパラマンガがなければ、ごく普通の映画作品として楽しめたかもしれない。原作の良さがあまり引き出されていない。というか、原作の良さは独特な絵柄とその手法により生み出された雰囲気なので、それを映画として表現すること自体が間違いなのだろう。

若くして結婚し、貧乏ながら幸せに暮らしていた家族に、ちょっとした不幸が訪れる。そこから、昭和のガンコオヤジ的な男が妻や娘たちに迷惑をかける。昭和のドラマだ。過去から現在に至るまで、ターニングポイントで、その当時ヒットした曲が流れる。

同じ時代を生きた人ならば必ず聞いたことのある曲なので、もし、その曲に思い入れがあるならば、ノスタルジックな気分になるだろう。オーソドックスな流れであり、ラストの娘の結婚相手との出会いのシーンなど、あまりにベタベタすぎて、ギャグのようにすら思えてくる。

ベタな展開であっても、パラパラマンガという特殊な媒体であれば良い。ただ、それを実写映画化してしまうと、使い古されたベタな展開の焼き直しでしかないので、チープな印象をもってしまう。エンディングで余韻を残すようなパラパラマンガが上映されると、なおさら本編のダメさ加減が目立つ。

パラパラマンガは振り子を時間の流れとして描いている。実写映画ではその部分がほとんど描かれていないので、特別な印象がない。昭和のベタドラマが好きな人には、それなりに楽しめるだろう。

パラパラマンガが秀逸なだけに、実写化での落差がすさまじい。



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