円卓  


 2017.4.2      これがTHE子供だ 【円卓】

                     
円卓 [ 西加奈子 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
子供とは無邪気で純粋で可愛らしいが、時にものすごく残酷で強烈な考えをもつ。自分の子供時代もこんな感じだったなぁ、と思わずにはいられない作品だ。家族に愛されて暮らす小学3年のこっこ。バカでくだらないことを考えたかと思うと、鋭く核心を突く話をする。素直なだけにとんでもないことを口走り、変なことに憧れる。こっこが関西弁というのも大きいのだろう。

すべてがギャグっぽく感じ、冗談に思えてくる。同級生の眼帯に憧れ自分もしてみたいと熱望するこっこ。さらには不整脈の同級生に憧れ、不整脈のフリをしてみたり。まさにこれが小学生なのだろう。こっこの純粋な疑問というのは、確かに大人が答えづらいものもある。これこそTHE子供だ。

■ストーリー
公団住宅で三つ子の姉と、両親、祖父母に愛されて暮らす「こっこ」こと渦原琴子は、口が悪く、偏屈で硬派な、孤独に憧れる小学三年生。こっこの日常は、不満と問題と驚きと発見に満ちている。世間の価値観に立ち止まり、悩み考え成長する姿を、活きのいい言葉でユーモラスに温かく描く。光溢れる感動傑作。

■感想
小学校3年生というのはこんな感じなのだろう。こっこの生活が語られているのだが、これが小学3年か、という驚きがある。自分が小学生の時は、恐らくこっこと変わらなくくだらないことを考えていたのだろう。クラスメイトがしている眼帯に憧れて、「ものもらい」という言葉に興味をもつ。

大人からすると眼帯のかっこよさはわからないが、子供からすると普段と違う、ちょっと怪我した感じがかっこよく見えるのだろう。極めつけは、どもりをもつ子の真似をするこっこ。大人からするとバカにしているように見えるのだが、こっこは純粋にかっこよいと思ったから真似をしたのだ。

大人の価値観では測れない子供だけの価値観。それは、大人ならば気を使うことを、まったく気にせずズゲズゲと言う。親が韓国人であったり、フィリピン人であったりすると、そのことに気を遣ったりもする。子供の場合は一切気にせず、まるで空気のように普段通りに過ごし、言いたいことを言う。

逆にこれが差別のない証拠なのだろう。大人が気を使うのはどこかで差別心があるからこそ気を使う。そもそも差別意識がないので、子供たちの会話に悪意はない。ただ、はたから見ている大人としては、ハラハラドキドキするような言葉の数々だ。

公団で暮らす子供たちの自由奔放でなんでもありな感じが良い。そして、関西のちょっと下品な感じが舞台にあっている。韓国人の朴君が不整脈でパニックを起こす。それを見たこっこたちは、パニッ君というとんでもないあだ名を付けようとする。

面白いが、さすがにダメだろうと思ってしまう。そして、不整脈がかっこよいからと、こっこは不整脈の真似をしてしまう。純粋にかっこよいと思ったからこそ真似をしただけのこっこ。大人が注意しようと、なぜ不整脈の真似をしてはいけないかという、こっこを納得させる説明は難しい。

小学生とはこんな感じなのだろうなぁと思わずにはいられない。



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