英国王のスピーチ


 2015.2.16      吃音の英国王 【英国王のスピーチ】

                     


■ヒトコト感想

実在した人物の物語。ジョージ6世という人物はよく知らないが、イギリス国王が吃音症ではっきりと演説ができないのは致命的だ。ラジオが全盛の時期ならば、なおさら演説は重要なのだろう。どもりながら演説されても頼りないことこの上ない。ジョージ6世が吃音を克服するまでを描いた本作。吃音は精神的なことが大きく影響しているらしい。

幼少期の体験や、周囲との関係。親や兄弟との能力の比較など、様々な要素が吃音症を生み出しているらしい。兄から国王の座を無理やり押し付けられた不幸な男。ただでさえ演説が苦手な上に、厳しい環境での国王就任ともなれば、誰でも緊張して逃げ出したくなる。吃音克服までのプロセスは特別なものではないが、妙に感動してしまう。

■ストーリー

ジョージ6世は、王になどなりたくなかった。兄のエドワードが、王室が認めない愛のために王冠を捨てたことから、予期せぬ座についたのだ。しかも彼には、吃音という悩みがあった。スピーチで始まり、スピーチで終わる公務の数々に、いったいどう対処すればいいのか? 王は何人もの言語聴覚士の治療を受けるが、一向に改善しない。心配した妻のエリザベスは、スピーチ矯正の専門家、ライオネルの診療所に自ら足を運ぶ。

堅く閉ざした心に原因があると気付いたライオネルは、ユニークな治療法で王の心を解きほぐしていく。折りしも第二次世界大戦が始まり、ヒトラーの率いるナチスドイツとの開戦に揺れる国民は、王の言葉を待ち望んでいた。ライオネルの友情と妻の愛情に支えられ、王は国民の心をひとつにするべく、渾身のスピーチに挑むのだが―。

■感想
ジョージ6世はイギリスの国王でエリザベス女王の父親というイメージしかない。それが吃音症に悩み、兄から国王の座を無理やり押し付けられていたのは知らなかった。どもりながら演説する姿は、さすがに威厳がない。正直、本作を見るまで吃音症の存在を忘れていた

子供のころには身近にいたような気もするが、大人になって吃音症の人とは出会っていない。それは吃音症を克服したのか、もしくは巧みに隠しているのか…。ジョージ6世のような立場であれば、吃音症の悩みも比べ物にならない強烈な悩みなのだろう。

吃音症を克服していくプロセスが興味深い。吃音症は精神的な影響が大きいということらしい。何かトラウマなのか、それとも…。ただ、精神的なものだとわかっていても簡単に克服できないからやっかいだ。イギリスの王室に所属するというのは、日々強烈なストレスなのだろう。

何をするにも注目され、吃音症にも関わらず戦争をまじかに控えた国民たちを鼓舞するために演説を行わなければならない。そこで、どもりながら演説をしたら、とたんに国民は白けてしまう。なんとも厳しい状況だ。

兄から無理やり国王の座を押し付けられたジョージ6世。気が弱いのか、それとも良い人すぎるのか。吃音は周りが思っている以上に本人自身は悩んでいる。気の弱さと、国王というプレッシャーは吃音症を回復どころか、悪化させるものでしかない。

スピーチの専門家であるライオネルが画期的な手法で吃音症を治療する。もしかしたら、本作を見ることで世間の吃音症で悩んでいる人に何かしらの希望が芽生えるのかもしれない。大人で吃音症に悩んでいる人がどの程度いるかわからないが、ある程度需要はあるような気がする。

実在の人物を扱いながら、これだけドラマチックに描けるのはすばらしい。



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