2016.8.5 生保破綻の舞台裏 【ダブルギアリング 連鎖破綻】
ダブルギアリング [ 真山仁 ]
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■ヒトコト感想
大手生保が破綻するまでを描いた作品。生命保険会社というのは、掛け捨ての保険であればまだしも、積み立て型であれば契約者に返金する必要がある。生保が破綻するという噂が少しでも立てば、たちまち生保はピンチにおちいる。架空の清和生命を舞台に描かれた本作。明らかにモデルの企業があるとわかる内容となっている。
生保がつぶれた際の連鎖破綻を危惧する政府と官僚。合併してでも生き残ろうと画策する生保幹部たち。謀略の限りを尽くしてでも、生き残ろうとする生保。どう考えても良い材料がなく、破綻へまっしぐらな状態であっても裏技を使い生き残ろうとする。巨大生保がつぶれることの影響の大きさを感じさせられる物語だ。
■ストーリー
破綻寸前に追いこまれた大手生命保険会社・清和生命。顧客からの解約、経営統合のキャンセルなど八方塞がりの状況の中、業界の暗部を歩んできた社長室次長の各務と、彼の同期で関西に左遷された中根は、生き残りのために奔走する。崖っ縁に立たされた彼らは、社長の命を受け最後の大きな賭けに打って出たが…。
■感想
巨大生保が破綻の危機におちいった時、どのようなことが起きるのか。生保を生きながらせるために様々な者たちが画策する。生保が破綻すると株の持ち合いをしているメガバンクも危機におちいる。まさに巨大すぎてつぶせない状況となっている。
本作では、小泉政権時代の竹中平蔵が金融大臣になったことを衝撃的出来事として描いている。政府と生保の密接なかかわり合いと、裏の仕事を引き受けてきた者から見た暗部。剛腕の会長の力で政治家を動かし生保を救うのか、それとも…。かなりリアリティある流れだ。
つぶれかけた生保におしよせる解約の波。企業年金の解約や個人契約者の解約により、キャッシュがない中でさらに必要な資金が底をついてくる。もはやどうにもならない状況ではないか?と読者は思うのだが、まだ奥の手がある。
企業が生き残るためには、激しい粉飾決算であろうと政府が見過ごすことはあるのだろうか。そして、法律を変えて消費者にすべてのツケを回す。なんでもありな世界だ。大局的に見れば、もしかしたら生保が生き残った方が世間の景気的には良いのかもしれないが…。なんだかなぁ、という思いはある。
ライバル生保との合併交渉や、外資との合併など、さまざまな手段を駆使して破綻を逃れようとする清和生命。末端の社員はどのような思いでいるのか。そして、一度世間に危ないと認識されてしまうと、解約の勢いを止めることはできない。
にもかかわらず、記者会見では平然な顔をして「大丈夫です」と答える。本作を読むと、もはや何も信じられないようになってくる。生保で積み立てるよりも、タンス預金していた方がましなのでは?なんて思えてくる。
破綻直前の生保の最後のあがきはすさまじい。
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