ドロレス・クレイボーン 


 2018.1.28      大便を撒き散らす老女 【ドロレス・クレイボーン】

                     
ドロレス・クレイボーン / スティーヴン キング / 文藝春秋
評価:3
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■ヒトコト感想
老女ドロレスが自らの半生を語る。ドロレスが関わったと思われる二つの事件の真相は…。悪態をつきながら、自分がいかに不幸な人生を歩んできたかを語るドロレス。ヴェラという金持ちの老女の家にメイドとして雇われていた時期のヴェラとの攻防はすさまじい。ボケ始めたヴェラであっても、ドロレスを頼りつつ、いかにしてドロレスを困らせるかを考え行動する。

ヴェラはとんでもない老女だが、ドロレスもヴェラに負けない悪女だ。そして、ドロレスは自分の夫であるジョージから受けたひどい扱いを語り、最終的な計画とそれを実行した場面をなまなましく語る。ドロレスの人生を読まされていると、思わず物語にのめり込んでしまう。

■ストーリー
そう、たしかにあたしは亭主を殺したさ…30年前に夫を殺したと噂される老女ドロレスに、再び殺人の容疑が。彼女の口から明かされる二つの死の真相―皆既日食の悪夢のような風景のなかに甦る忌まわしい
秘密。罪が生み出す魂の闇。キングの緻密な筆がアメリカの女性の悲劇を余すところなく描き出す、慟哭の心理ミステリー。

■感想
ドロレスは酒浸りで働かない夫ジョージの代わりにヴェラの家でメイドとして働き、生活費を稼ごうとする。ヴェラは大金持ちだが気難しい。ヴェラなりのルールがあり、そのルールから少しでもはみ出すと、あっさりとクビになってしまう。

ただ、ドロレスだけは、ヴェラに悪態をつかれながらも気に入られている。寝たきりとなったヴェラとドロレスの攻防はすさまじい。大便をまき散らそうとするヴェラと、そうはさせまいと策略を練るドロレス。すさまじい状況であることは間違いない。

なんだかんだとありながら、ヴェラの家でメイドとして仕事をすることは、ドロレスにとっては金の面で欠かせないものとなっている。ドロレスは子供のために教育費を貯金していたが、それを夫のジョージに黙っておろされてしまう。

激怒したドロレスは、ジョージを殺害する計画をたてる。ドロレスの状況は確かに不幸かもしれない。ジョージのクズっぷりや、杓子定規な銀行員など、弱者にやさしくない状況というのがはっきりとわかる。ドロレスの状況は同情に値する。

ドロレスのジョージ殺害計画は非常に生々しい。ドロレスの決意に気づかないジョージは哀れでしかない。その後の警察とのやりとりにしても、ドロレスの強心臓ぶりが語られている。ジョージだけでなく、ヴェラまでもが転落死した際には、警察はドロレスに激しく疑いの目を向けることになる。

ドロレスは結局のところ不幸な境遇であることは間違いない。ドロレスの娘や息子についても、不幸でしかない。幼少期のトラウマは、決して最後まで晴れることはないだろう。

ドロレスの壮絶な人生は、思わず目が釘付けとなってしまう。



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