デッド・ゾーン 下 スティーヴン・キング


 2016.8.10      過去に戻れるならヒトラーを殺すか? 【デッド・ゾーン 下】

                     
デッド・ゾーン 下巻 / スティーヴン キング / 新潮社 [文庫]
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■ヒトコト感想
超能力者として世間に認知されつつあるジョン。ただ、インチキだという評判に変わりつつもある。ジョンは平凡な暮らしをしたいだけ。セーラとの交流。父親との平凡な暮らし。教師の職業を手に入れたジョンは日常を取り戻すかと思われたのだが…。

ジョンの能力が高まり、触れた人の未来までも見えてしまう。未来が見えるために苦悩するジョン。不幸な未来が明らかになっている状態で、ジョンはどのような行動をとるべきなのか。もし、過去に戻れるとしたらヒトラーをどうするか?というジョンの問いがすべてを表している。自分の能力は人に信じてもらうのは難しい。そんな状況で苦悩するジョンが最後にとった行動は非常に感動的だ。

■ストーリー

まがいものの“神”になってしまったジョンの苦悩は続いた。人は誰でも将来を教えてもらいたがるが、それは決してその人に幸せをもたらさない。その上,彼にはすべてが見通せるわけではなかった。頭の一部に黒い塊=デッド・ゾーンがあって、そこにある情報は出てこないのだ。それでも彼には予知できた―有力な大統領候補者のスティルソンが、国をどこに率いていくつもりなのかを。

■感想
触れた者の過去を知ることができるジョン。世間からはインチキ超能力者のレッテルを貼られるが、ジョンは気にしない。平凡な暮らしをしたいジョンは、インチキ報道を逆手にとり、平和に暮らしていたのだが…。ジョンの能力がある日突然変化してくる。

突如未来が見えるようになり、高校生の卒業パーティの会場が落雷で大火事になる映像を見る。ここからジョンの苦悩は始まる。悲惨な未来を告げたとしても、周りが信じてくれるとは限らない。最終的にジョンのアドバイスを聞いた半数の高校生たちが助かることになる。

未来を知ることができるジョンの苦悩はすさまじい。もし、過去に戻れるとしたらヒトラーをどうするか?という問いをアチコチでしているとおり、ジョンはある議員が未来に大統領となり、世界を核戦争へ導くと知る。法的にいくらジョンが訴えたとしても誰も聞かない。

ジョンの葛藤はすさまじい。卒業パーティの会場へ事前に車で突っ込みむちゃくちゃにすれば、高校生たちは死なずにすんだ。ただ、そこで法的に裁かれるのはジョン自身だ。この葛藤ののちジョンはある行動にでる。

未来を知ることができる宿命なのだろう。ジョンの最後の行動は非常に感動的だ。そして、単純に議員を殺して終わりではないところが良い。議員を殺さずに未来を変える方法。偶然だとしても、物語としてはベストなのだろう。

ジョンの行動が正当化されるかどうかは、結局のところ本作では描かれていない。議論の対象となるにとどまっている。世間に受入れられがたい能力を手にし、なおかつ強い正義感を持つ男の宿命かもしれない。ジョンの行動の成果が表れることがないのも皮肉なことかもしれない。

マジメな男の悲しい宿命が描かれている。



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