2016.4.13 こんなことをやっている人がいる 【だから人間は滅びない】
だから人間は滅びない [ 天童荒太 ]
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■ヒトコト感想
作者が様々な人物と対談した模様を描いた作品。対談相手として作者が選んだ人物たちは、すべてどこか公共的な利益のために仕事をしているような印象を受けた。農業に力をいれる事業主、障碍者が働く工場に仕事を依頼する者。産後の母親のケアを専門に行う者。反グローバリゼーション雇用など、ちょっと変わったことをやり続けている人たちに注目している。
そのすべての人たちが決まって言うのは、人との繋がりを大事にしているということだ。ビジネスの基本として金を稼ぐこともあるのだが、なにより人に喜んでもらうということに重点を置いている。すべてがすべて今後もうまくいくとは限らないだろう。今だけの存在で、すぐに事業として成り立たなくなるかもしれないが、こんなことをやっている人がいるのだ、という驚きに満ちた作品だ。
■ストーリー
紛争やテロ、巨大地震や環境破壊、新型感染症、虐待や貧困の連鎖。この日常化した非常事態がつづけば、人間はいまに滅びる。見えにくい人々の孤立化を描いてきた著者が、生き延びるためのヒントを求め、他者と「つながる」ことで社会を変えようとしている人々に話を聞いた。
被災地の子ども支援、産後の母親ケア、障害者雇用、新しい農業の形。リスクに備えるには人とのつながりを持ち、広げること。希望が芽生える<群れ>のすすめ。
■感想
タイトルから連想するのは、人間の力強さだ。大震災を受けてもなお、普段通り生活し、同じように原発を再稼働させようとする。ある意味たくましい。これほどしぶとく同じ過ちを繰り返してでも、今の生活レベルを維持しようとする生物はいないだろ。
そんな面をもちつつも、人として人との繋がりを重視することで何かを成し遂げようとする人たちがいる。作者が対談する相手は、一般的にはそれほど有名人ではない。事業に大成功し、セレブな生活をしているわけではない。が、特別な仕事をしているという自信のようなものがみなぎっている。
NPO活動が印象に残っている。本作で紹介される中で、いくつかこのワードが登場してくる。資本主義からは離れた活動ではあるが、自分たちがやりたいことだけをやる。人に喜んでもらうことだけをモチベーションとして活動する。利益重視ではないだけに、株主から口を出されることもない。
ただ、事業として成立させるためには、自分たちの食いぶちと、事業を大きくするための資金さえあれば良い。NPOがどれだけ成立するのか正直よくわからない。中には怪しげなものもあるのだろうが、本作に登場してくる人たちは、真に何かを成し遂げようと考えている人たちだ。
障碍者を働かせる工場へ積極的に発注する事業者。なぜそうするのか?健常者の方が絶対に確実のはずだが…。あえて障碍者が勤務する工場へ仕事を発注することの理由が語られている。日本には何人の障碍者がいて、時給がおよそいくらで、普通に生活するには程遠いなどということが書かれている。
正直言うと、見て見ぬふりというか、気づかない部分の内容かもしれない。普通に社会人生活を送っていると障碍者の状況など気にすることはない。まして、どんな仕事をしているかなんて…。
普段気にすることのないことへ注目するには良い作品だ。
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