クライマー パタゴニアの彼方へ


 2017.5.30      シナリオがあるようなドキュメンタリー 【クライマー パタゴニアの彼方へ】

                     
クライマー パタゴニアの彼方へ [ デビッド・ラマ ]
評価:3

■ヒトコト感想
パタゴニアの険しい山をフリークライミングで登るドキュメンタリー。天才クライマーのデビッドが、山を登りきるまでを描く。まず驚くのがフリークライミングで標高の高い山を登ろうとするところだ。切り立った断崖絶壁を指と手足を使って登りきる。過去の登山者が作り上げたルートには登りやすいようなネジが刺さっている。山を傷つけて登ることに意味があるのか。

何千ものボルトを差し込み登ることは可能なのだろう。それをせず、体ひとつで登ることに価値がある。雪深い季節に登ることは難しい。肉体ひとつで登るにしても、季節や天候、そしてパートナーが重要になる。本作では、登る映像の他にひたすら待機する映像もあることが非常に興味深い。

■ストーリー
若き天才クライマー、デビッド・ラマが南米パタゴニアにそびえる難攻不落の山・セロトーレにフリークライミングで挑む姿を追ったドキュメンタリー。厳しい天候、肉体の限界、周囲の不協和音などの様々な困難に直面しながら前人未到の登頂を目指す。

■感想
前人未到の山にフリークライミングで挑戦するデビッド。ただ、その道のりは一筋縄ではない。当然ながら、最初は失敗続き。先人の残したボルトを使っての登山がやっとの状態。そんな困難な山にフリークライミングで挑戦するのは厳しい。

ひたすら待機する中で、仲間たちと不協和音も生まれてくる。山のふもとで多少は恵まれているとはいえ、ごく普通の生活とは異なる環境で暮らすデビッド。当然ながらストレスは溜まり、爆発することもある。常にカメラが密着しているのもストレスのひとつかもしれない。

スポンサーの存在を感じずにはいられない。デビッドのスポンサーはレッドブルなのだろう。ヘルメットや周りの設備を見てそれを感じとれた。やはり金をだす者がおり、その者からのプレッシャーがあるのだろう。天才であっても攻略困難なことだからこそスポンサーが支援してくれる。

ドキュメンタリーとしては挫折あり、仲間割れあり、不運と幸運があり、最後のチャンスに恵まれる。まさにシナリオがあるような展開となっている。まるで虚構の作品と言われても納得してしまうような流れだ。

本作のメインはすさまじい山の映像だろう。デビッドがひとりで山の頂上付近の断崖絶壁にへばりついている。ロープはついているのだが、落ちたらただでは済まない。アックスやザイルを使うことなく、自分の指と足を使って絶壁を登る。

小さなひびに指を入れ足を引っ掛け登る。ごく普通の垂直な壁を登っていると言えば良いのだろうか。もはや登山ではない。垂直な壁を手足だけで登るなんてのは、常人がやることではない。一歩間違えれば死が間近に迫る世界は、強烈な緊迫感に溢れている。

まるでシナリオがあるような展開だ。



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