Classical Fantasy Within 第1話 島田荘司


 2015.1.14      神をも恐れぬ新兵器 【Cassical Fantasy Within 第1話】

                     

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■ヒトコト感想

SF風だが、まだその全容は見えてこない。戦時中、日本の危機を救うための秘密兵器について描かれている。ロケット戦闘機「秋水」についての描写は衝撃的だ。机上の理論をそのまま実践投入しようとし、物資が不足する中で、ありあわせで作られた秘密兵器。実在した秋水のエピソードをより衝撃的に描いた本作。秋水開発とその飛行実験の描写がすばらしい。

秋水の危険性と、亡国の危機を天秤にかけたとき、ひとつの答えがでる。秋水の開発がその後の秘密兵器へと繋がることになる。主人公の「ぼく」の周辺でどのような変化が起きるのか。「ぼく」の母親を巻き込んでの特殊な状況というのは、今後どのようね展開になるのかまったく想像がつかない。シンプルだが先が気になる物語であることは間違いない。

■ストーリー

戦局が風雲急を告げ、日本の降伏が濃厚となった昭和二十年。亡国の危機を打開するため、最新鋭の高速度ロケット戦闘機「秋水」の研究開発に携わる「ミツグ伯父さん」を慕い憧れる少年、「ぼく」。しかしその現実は、奇妙に、そして確実にねじれていく…。“

■感想
日本が劣勢に立たされた昭和二十年。敗色濃厚の戦局を打開するために開発されたロケット戦闘機「秋水」。実在した秋水をたくみに盛り込んだ本作。まず、秋水の開発から飛行実験に至るまでの描写が濃密だ。危険な飛行実験と理解しつつも、果敢に挑戦した男。

「ぼく」の目の前で白い煙を上げて着陸した秋水の描写は衝撃的だ。危険な薬品を背中に背負った状態で、不安定な飛行実験を続けることの意義は何なのか。失敗が次の成功へと繋がるという流れなのだろう。この秋水の開発があってこそ、次の秘密兵器の意味がある。

日本の危機を救う謎の秘密兵器。その原理が説明されるのだが、かなり特殊だ。雷を電力として使用し、物質の複製ができるというもの。そして、その複製すべき物は人も可能だと言う。「ぼく」が誰を複製したいと言うのか。人を複製したとき、どのような副作用があるのか。物語の結末はまったく想像がつかない。

「ぼく」が母親の複製を望んだとき、どういった変化が「ぼく」に訪れるのか。道徳的にも人道的にも反する発明であることは間違いない。神をも恐れぬ発明を実行したとき、どのような天罰が下るのか。

本シリーズの序盤は、間違いなく秋水の衝撃的な事故描写だろう。そこから、ミツグ伯父さんにより発明された機器を使い、「ぼく」の母親を複製しようとする。戦時中の秘密兵器としては、兵士を無尽蔵に複製できるのであれば、これほど効果的なものはない。ただ、そううまくいかないのが定番だ。

シリーズとして続く本作。今後どのような展開になっていくのか、ワクワク感と期待感により作品自身の評価も上がっていく。物語の全容が見えないだけに、不安感もあるが期待の方が大きい。

恐らく、シリーズの最後まで読み続けるだろう。



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