バラ色の未来 


 2017.9.25      欲にまみれたドロドロとした世界 【バラ色の未来】

                     
バラ色の未来 [ 真山仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
町にカジノを誘致しようと動く勢力と、政治家、新聞記者、代理店、カジノオーナーなどの複数の者たちが、それぞれの利益のため動き出す。新聞社の編集局次長の結城は正義感から総理大臣の不正を暴こうとする。ドロドロとした世界が描かれている。カジノを日本にという話が出た時には、すでに誘致場所は決まっていた。ただ、それは口約束でしかなく、たやすく他の場所へうつる場合がある。

非常に恐ろしい世界だ。いざとなれば相手を脅迫することをいとわない。怪しげに動き回る代理店の男たちは、自分たちの利益だけを考え調子の良いことを口にする。それらを暴こうとする結城に対しては、政治家の息のかかった幹部からストップがかかる。ドロドロとした世界が濃密に描かれている。

■ストーリー
総理大臣官邸にプラスチックのコインを投げつけていたホームレスは、IRを誘致し町おこしをと気炎を上げ、総理の指南役とまで呼ばれていた元名物町長・鈴木一郎だった。日本初のIRは、5年前、土壇場で総理大臣・松田勉のお膝元に持って行かれていた。

彼を破滅に追いやった誘致失敗の裏に何があったのか!?東西新聞社の編集局次長・結城洋子は、特別取材班を組み、IRやカジノの問題を徹底的に追及しようとするが―。

■感想
総理大臣にお墨付きをもらいカジノ誘致に成功するかと思われたやさき、すべてが無に返る出来事が起こる。カジノ誘致に心血を注いだ鈴木町長がホームレスとなり死亡していた。そこから、過去の出来事を探ろうと結城が動き出す。町おこしを目的としたカジノ。

ほぼ決まりかけていたはずが、土壇場でひっくり返される。怪しげな代理店の男は、総理の意向を優先する。皆が自分の利益だけを考え、駆け引きを繰り返す。かすかな良心が残っている者がその状態に苦悩する。非常に厳しい世界だ。

カジノ誘致に失敗した際のインパクトはすさまじい。その怒りの矛先が向かうのは町長であり代理店の男となる。恐らく世間で当たり前に起きている出来事なのだろう。土壇場で候補地が変わる。ほぼ確定と言われ、多大な金を投資してきた者たちの怒りは当然だが、みな自分が欲にまみれて行動したためだ。

結城が総理を糾弾する内容の記事を書こうとすると、総理と親密な幹部からダメ出しをくらう。すべてが政治力により無力化されてしまう世界だ。不正を正し、正義の番人である新聞社さえも、政治家に牛耳られている。

バラ色の未来というタイトルは相当に皮肉が利いている。みながバラ色の未来を夢見て行動したが、結果的に誰もバラ色の未来を手にしていない。欲に目がくらみ身を滅ぼした者。代理店の上司の言うことを聞いたため、友達に恨まれ故郷に帰れない状態となった者。

ひたすら地元を優先し続けた結果、多方面から恨みを買い、ついには新聞社にすべてを暴露される男。誰が正しいというのはない。政治家の利権が絡んだ話となると、本作のような状況は当たり前に起きているのだろう。

ドロドロとした世界が凝縮されている。



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