愛と誠


 2016.3.22      少し恥ずかしくなるミュージカル 【愛と誠】

                     
愛と誠 / 邦画

■ヒトコト感想
マンガは未読。そのため、新鮮な気持ちで見ることができた。昔ながらの単純明快なストーリーではあるが、濃いキャラクターと突如はじまるミュージカルに最初は困惑した。というよりも、見ていて恥ずかしい気持ちになってきた。それが、物語を見ていくうちに、それらの突飛な演出が気にならなくなり、ジワジワと面白くなってくる。

基本はシリアスな物語なのだが、あちこちにコメディチックな流れが埋め込まれている。ぶっきらぼうな誠と頭がいっちゃっているように思える愛。ぶっ飛んだ流れであることは間違いない。誠がひたすら暴力にあけくれ、愛は誠のことだけを考える。周りはふたりに振り回される形になり、不良グループなどは、ただのやられ役でしかない。この流れは強烈だ。

■ストーリー

ブルジョア一家の令嬢・早乙女愛は幼少期、雪山で見知らぬ少年に助けられた。その出来事は、彼女の心に“白馬の騎士との出会い"として、強烈な思い出となり刻み込まれた―。それから11年後の1972年、新宿地下街。愛(武井咲)の前に現れたのは、超不良の太賀誠(妻夫木聡)。それは運命の再会だった―。

不幸な少年時代の復讐を胸に東京へやって来た誠は不良グループとの殴り合いのケンカの果て、上京早々少年院送りに…。運命の人との再会を果たした愛は、誠を更生させるため、両親(市村正親、一青 窈)に頼み込み、名門青葉台学園に誠を編入させる。さらにはアパートや学費を用意し、誠を更生させることを宣言するが…。

■感想
誠と運命の再会をはたした愛は、誠を暴力の連鎖から救い出そうとする。誠は愛の思いが迷惑でしかない。名門学園に無理やり編入させられた誠だが、素行を改めることはない。愛の異常なまでの誠への執着は、ミュージカル調になったとしても異質だ。

そして、愛の両親たちもどこか頭のネジがぶっ飛んでいる。まず、突如としてキャラクターが歌いだすこの流れを受け入れることができるかがポイントだ。最初は、この流れに困惑するだろうが、いつの間にか慣れてしまうのが不思議だ。

不良の巣窟へ転校した誠。ここでも女番長をあっさりと打ち破るが、大ボス的存在に負けてしまう。主要キャラクターたちにはそれぞれ懐メロを歌うという仕事がまっている。ハリウッド作品などでイメージするミュージカルと、日本人ががっつりと歌うミュージカルでは雰囲気がかなり異なる。

というか、見ているこっちが少し恥ずかしくなるような感じかもしれない。物語は基本シリアスではあるが、狙っているのかそうではないのか、あちこちにギャグがちりばめられている。

ラストまで徹底してシリアスだ。が、単純なシリアスではなくコメディ要素が大量に含まれている。万人受けする内容ではない。ただ、強烈なインパクトがあるのは間違いない。裏ですべてを操るスケバンにしても、義理の父親を刺すシーンがあるのだが、明らかに異質な映像となっている。

最初から最後まで愛にべたぼれしているメガネ君は、常に虐げられる存在でありながら、ギャグでは大事な要素となっている。商業的な成功はまったく見込めないのだが、作り手が好きなように思うがまま作った作品に間違いはないだろう。

圧倒的に自由でなんでもありな印象を受ける作品だ。



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