ニューヨーク冬物語


 2017.6.8      100年後の世界で再会 【ニューヨーク冬物語】

                     
ニューヨーク 冬物語 [ コリン・ファレル ]
評価:3

■ヒトコト感想
物語の序盤から中盤にかけてごく普通の死が間近に迫った女と、女を愛する男の恋物語かと思った。それが、悪魔的な存在や白馬に羽が生えるなどファンタジーな要素が見えてきた。そして、終盤では突如として100年後の世界となる。ここで初めて物語の肝に気づくことができる。序盤のメカに強いドロボーが、強盗団から抜け出し結核の美女に恋をする物語から、100年後の世界で少女を救うファンタジーへと変化している。

何の予備知識もなしに見ると驚くことだろう。人には使命があり、それを達成するために生きている。だからといって100年後の世界で見た目も変わらないまま生きるというのは…。あらかじめファンタジーとわかっていればまったく問題ないのだが…。

■ストーリー
男の名は、ピーター・レイク。幼い頃に両親と生き別れた彼は気がつけばニューヨークの裏社会を支配する男のもとで、悪に手を染める日々を送っていた。ある日ピーターは美しい令嬢、べバリーと出会い、すぐに恋に落ちた。初めて生きることの素晴らしさを知ったピーター。だが、べバリーの余命はわずかだった。

彼女を救うためなら何だってする―ピーターの切なる想いは叶わず、べバリーの命はつきる。100年後、ニューヨークの街に、記憶を失くしたピーターの姿があった。「俺は、なぜまだ生きている?」記憶がひとつ甦るたびに、生まれる謎。100年にわたり生かされた男に与えられた、ある使命とは―?

■感想
幼いころに両親に捨てられたピーター。海の上で小さな船に乗せられ、さまよいニューヨークへ到着する。この時点で、いつ死んでもおかしくない状況から生き残った奇跡の子供だ。この場面にどんな意味があるかというと…。人には使命があり、その使命を達成するために生かされている。

序盤では泥棒が美女に恋をする物語となっている。美女は結核で余命わずか。ただ、生きる喜びを知った二人は、精一杯わずかな時間の幸せを満喫する。ここまではありきたりな恋愛映画で、特別な要素はない。ただ、ピーターを狙う組織のボスが怪しげな存在というだけだ。

中盤から100年後の現代になる。そこでは100年前と変わらぬ姿で記憶をなくしたピーターがいる。ここで物語が時空を超えたファンタジーだということに気づく。ピーターが100年後に存在する理由は何なのか。同じように組織のボスも100年前と変わらぬ姿で現代に登場してくる。

かすかにピーターのことを知っている者の存在により、ピーターの使命がおぼろげながら明らかとなる。単純な恋愛物語ではない。根本にあるのは、人の使命が何なのかということだ。タイトルだけ見ると恋愛物語を連想してしまう。

ファンタジーあふれる物語のオチは、ある程度想定どおりだ。ただ、ピーターだけでなく、悪の組織のボスも100年後の世界で記憶を保ったまま存在している。そして、大元締めに対して死ぬことを望んでいるような言葉まである。永遠に生き続けることの苦痛があるのだろうか。

100年後の世界に生きるとしてもピーターのように記憶をなくしていれば、何の問題もないのかもしれない。強烈なインパクトはないのだが、中盤で物語のトーンが変化しているので、それなりに驚きがあるのは間違いない。

単純な恋愛物語よりは変化があって良い。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp