Dの殺人事件、まことに恐ろしきは  


 2017.4.25      最新ITを駆使したミステリ 【Dの殺人事件、まことに恐ろしきは】

                     
Dの殺人事件、まことに恐ろしきは [ 歌野 晶午 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
過去の名作ミステリーを現代版にアレンジしたミステリー短編集。最新IT機器を駆使したミステリーとなっている。名作ミステリーを知っていればより楽しめるが、知らなくても純粋なミステリーとして楽しめる。ITを駆使した部分がポイントになっている。過去であれば閉じ込められてから外部と連絡をとる手段がないとしても、現代であればスマホがある。それを逆手にとる形でより恐ろしさを増幅させている。

自分は元ネタを知らない状態で読んだのだが、どれも楽しめた。現代版にされているため、よりリアル感があり、世間でこんなことがありえるのかも?と思えてしまう。ストーカー風の気持ち悪さや、小賢しい子供の憎たらしさは、現代の方がレベルが上だろう。

■ストーリー
カメラマンの「私」が渋谷の道玄坂で出会い、交流するようになったのは、賢いが生意気な少年・聖也。その日も私は道玄坂のダイニングバーで聖也と話していたが、向いの薬局の様子がおかしい。駆けつけた私たちが発見したのは、カーペットの上に倒れた、上半身裸の女性だった。

その後、私と聖也は事件を探り始める。しかし、私はあることに気がついてしまい、元の世界には戻れなくなっていた――(表題作)。「人間椅子」「押絵と旅する男」「D坂の殺人事件」「お勢登場」「赤い部屋」「陰獣」「人でなしの恋」……サプライズ・ミステリの名手が、新たな魅力を吹き込む!

■感想
「椅子?人間!」は、椅子の中に人間が入りストーキングするという物語だ。自分が普段座っているソファーにストーカーが隠れていた。となると、気持ち悪さで鳥肌が立つ。本作では突発的にストーカーを始末しようと手近にある包丁でソファーを突き刺したのが運のつき。

ある程度オチは想定できるのだが、オチに至るまでに二転三転するのが良い。昔ならばいざ知らず、現代ならばソファーに入らずともカメラや盗聴器などで相手をストーキングする手段はある。それをうまく利用している。

「スマホと旅する男」は、冴えない男がアイドルとテレビ電話をしながら観光をしていたのだが…。スマホ内にAIを搭載させアイドルを恋人のようにふるまわせる。まさに現代の技術で可能な物語だろう。本物のアイドルと知り合いだと思い男に話しかけ、男がアイドルとの関係を語るのがなんとも気持ち悪い。

スマホ内の映像がAIだというのはある程度想定できた。が、そのさらに上をいくオチが用意されているのがすばらしい。というか、さすがに今の技術では本作のオチのような仕組みは作れないだろう。

「「お勢登場」を読んだ男」は、まさにITを駆使したすばらしいミステリーだ。箱の中に閉じ込められた男が妻に助けを元めるのだが…。昔ならば箱に閉じ込められたら外部に助けを求める手段はない。現代であればスマホを使えば良い。それを逆手にとった手法がすばらしい。

助けを求める相手は浮気をしている妻。旦那と別れたい=死んでほしい妻はどのような手段を用いるのか。スマホを熟知しているからこそできるトリックだ。普通に考えれば、スマホがあれば警察なりに連絡できると考えてしまうだろう。

ITを駆使したミステリーがかなり新しい。



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