2015.2.2 呪われたトラックの行く末は 【
BT'63 上】
■ヒトコト感想
過去と現在が絡みあうSF風な物語。琢磨が四十年前の父・史郎の体に入り込み、四十年前を体験する。そこから始まる物語なのだが、いつものごとく経理関係の話が絡んでくる。傾き始めた運送会社をなんとか建て直そうとする史郎。そして、史朗と同じ目線で四十年前を経験する琢磨は、会社再建のために個人向け宅配を思いつく。
物語はBT21というトラックにまつわる不思議な出来事と、運送業者が個人向け宅配を行うための苦労が描かれている。さらには、現代の琢磨周辺の出来事も過去と絡んでくる。なぜ、琢磨が過去を経験できるのかは明らかにならない。琢磨はあらゆる手がかりを探し出し、自分の妄想ではなく、真実の出来事だと気づく。宅配事業がどうなるのか、トラックがどうなるのかは下巻で明らかとなるのだろう。
■ストーリー
父が遺した謎の鍵を手にすると、大間木琢磨の視界に広がるのは、四十年前の風景だった。若き日の父・史郎が体験した運送会社での新事業開発、秘められた恋…。だが、凶暴な深い闇が史郎に迫っていた。心を病み妻に去られた琢磨は自らの再生をかけ、現代に残る父の足跡を調べる―。父と息子の感動長編。
■感想
精神が不安定となり退職した琢磨。そんな琢磨があるきっかけで四十年前の父親と同じ意識を共有することになる。琢磨が普通ではないことが、何か特殊な状況へつながるのだろう。傾き始めた運送会社を建て直すために、史郎が思案しているところに、琢磨が宅配というヒントを投げかける。
現在を知る琢磨が過去の父親にヒントを与えることにより、現在が変化しているようにも思われる本作。タイムパラドックスについては関係ないのだろうか。すべては琢磨の妄想というオチも考えられる。
現在の琢磨は決して幸せな状況にあるわけではない。妻とは離婚し、その妻が借金に悩んだ結果…。現在の不幸な境遇を改善しようと、過去の出来事をひっぱりだす琢磨はすさまじい。少しの可能性からあらゆる方法を探り出す琢磨の執念はすさまじい。
物語としてはBT21という呪われたトラックが鍵となるのだが、先がどうなるのかまったく想像がつかない。きな臭い殺人事件が発生し、BT21が大きく関わることになる。そして…。本作の流れから、幸せな結末へと繋がるとはなかなか思えない物語だ。
上巻ではSFの要素が強い。過去と現在それぞれで問題があるので、どのように繋がっていくかがポイントなのかもしれない。宅配事業をスタートさせる史郎。本来ならそこから会社は急成長するはずだが、現在の琢磨が調べると、個人向け宅配の失敗により倒産したことを知る。
過去で何が起こったのか。そして、呪われたトラックの行方は…。SFと企業の倒産の経理的話がミックスされた作品であることは間違いない。作者の作品としては、めずらしい雰囲気かもしれない。
琢磨が過去を見ることができる明確な理由は、下巻で説明されるのだろうか。
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