絶望ノート 


 2014.12.29      いじめへの恨みをつづるノート 【絶望ノート】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

いじめの苦しみを「絶望ノート」に書く。いじめグループたちへの恨みをつづる日記。日記形式ですすむ本作。強烈ないじめの内容と、たとえいじめを両親や先生に訴えたとしても、巧妙ないじめグループリーダーの是永により、うやむやにされるのは目に見えている。いじめを受ける照音の苦悩と、絶望ノートを盗み見てしまった両親の困惑。

絶望ノートに是永たちへの恨みと綴ると、なぜか、その願いが叶ってしまう。いじめをテーマとした物語だけに、強烈なインパクトがある。いじめの描写がすさまじく、抜け出しようのない苦悩が描かれている。ただ、それらを凌駕する驚愕のラストが待っている。作者の他作品を読んでいる人ならば、もしかしたら仕掛けに気づくかもしれない。

■ストーリー

中2の太刀川照音は、いじめられる苦しみを「絶望ノート」と名づけた日記帳に書き連ねた。彼はある日、頭部大の石を見つけ、それを「神」とし、自らの血を捧げ、いじめグループの中心人物・是永の死を祈る。結果、是永は忽然と死んだ。が、いじめは収まらない。次々、神に級友の殺人を依頼した。警察は照音本人と両親を取り調べたが、殺しは続いた。

■感想
誰にも言えないいじめの苦悩をつづった日記「絶望ノート」。照音はいじめグループの是永たちにカツアゲされ、あげくの果てにはレジから金を盗んだり、万引きまでさせられてしまう。周りからは仲の良い友達同士がじゃれあっているように見え、明るく楽しい是永に引っ張られる仲良しグループと思われている。

世間でよくあるパターンだ。周りは「友達と思っていました」というていの良い逃げ口実。本人の気持ちは無視して教師や親たちまで、いじめの現実を直視しようとしない。そんな苦しみが絶望ノートから伝わってくる。

照音は苦しみから逃れるため、絶望ノートに作り上げた架空の神に祈りをささげる。是永を殺してください。いじめから逃れるためには神に祈るしかない。このあたりから、神への祈りが現実となるという、おかしな流れができあがる。

照音が憎く思った相手は、大けがを負い、果ては自殺してしまう。読者はここで何かを想像するのだろう。絶望ノートを盗み見た母親を疑うのか、それとも…。いじめをめぐる問題の複雑さは、母親が探偵に調査を依頼することからもわかる。なんとも鬱になる展開だ。

絶望ノートの記述は続き、ついには…。複雑に絡みあう人間関係。照音の家が貧乏で父親が無職というのも、照音の不幸さを増幅させている。そして、絶望ノートの真実がついに明らかとなる。まさかの展開だが、微かに何かを気付かせる記述がある。

無理やり万引きをさせられた際の周りの反応から、もしかしたら?というひとつの可能性を捨てずに読み続けた。結果はその通りだったのだが、驚きはすさまじい。いじめをつづるノートという、誰もが想像するパターンを逆手にとった良作だ。

日記形式というのが、なによりいじめのリアルさを増幅させている。



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