2014.8.22 親子の絆に苦悩する男 【容疑者】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
親子関係がポイントとなる本作。刑事のヴィンセントは、幼いころ、父親が犯罪を犯し、死刑を宣告されたことにショックをうける。成長し刑事となってからは、離婚した元妻と生活しているはずの息子に殺人事件の容疑がかかる。ヴィンセント中心の物語だが、息子のダメっぷりが強烈に描かれている。ドラッグに溺れ、盗みをくりかえす。
観衆はそんなダメ息子に対して、刑事でありながら気にかけるヴィンセントのことを甘いと感じるのか、息子思いの良い父親と感じるのか、分かれることだろう。14年ぶりに息子と再会してみれば、いつの間にか孫までいた。驚きの数々と、困惑。父親からすると、息子のことを気にかけてはいたが、息子側からすると違ったというすれ違いパターンだ。
■ストーリー
ブルックリン・ビーチに麻薬密売人の他殺死体が上がり、NY市警のヴィンセント(ロバート・デ・ニーロ)は、殺害場所が自分の故郷ロングアイランドであることを突き止めた。捜査を兼ねて14年ぶりに帰省した彼は、やがて離婚した妻との間に儲けた息子(ジェームズ・フランコ)が容疑者として浮かび上がったことから捜査から外されてしまうのだが…。
■感想
ヴィンセントが、いつものロバート・デ・ニーロ風なちょっと荒っぽい刑事なことがすべてだろう。上司にも噛みつくタイプだが、真実を追い求める執念はすさまじい。息子が殺人者として指名手配されたとしても、真実を追い求める姿勢は変わらない。
荒っぽい刑事でありながら、仲間思いで、恋人もいる。ヴィンセントの安定した生活を壊すのは、別れた妻と息子だ。ヴィンセントの困惑と苦悩は伝わってくる。ダメ息子に怒りながらも、孫や息子の嫁が家に訪ねてくると、顔がゆるむ。ヴィンセントも普通のおじいちゃんだとわかる場面だ。
ヴィンセントの息子が、これでもかというくらいダメ人間だ。ドラッグ常習者で、ドラッグを買う金ほしさに盗みを働く。典型的なチンピラだが、大きな事件を起す勇気はない。何かと言えば夢を語り、街を出ることを考える男。
売人の元締めに狙われることになり、逃げ惑う。ヴィンセントとは対照的になんのポリシーもない男のように見えてしまう。こんな男のためにヴィンセントが苦悩するのは、親子という絆がそれほど重いものだと思わずにはいられない。
ラストはヴィンセントとその息子の親子愛が試される場面が登場する。息子のためを思って行動してきたヴィンセントが、過去を思い起こす場面は、誰もが経験することだろう。ヴィンセントを中心として、ヴィンセントと父親の関係。ヴィンセントと息子の関係。
反面教師としてきたはずの父親に、知らず知らずのうちに似てしまうことはある。虐待を受けた子供が、成長し親となり、子供に虐待をするなんてことはよくある話だ。不幸な親子関係の連鎖をどこで断ち切ることができるかが本作の見どころだ。
ロバート・デ・ニーロの苦悩する表情は、やはり秀逸だ。
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