余命1年のスタリオン 


 2014.8.25      余命1年、何をすべきか 【余命1年のスタリオン】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

余命1年を宣告された俳優が、最後に自分の人生を賭けた映画へ挑戦する物語。若くしてがんを宣告された男は、どのような行動をとるのか。作者の文体のせいだろうか、死への恐怖よりも、自分の種を残すことへの執着を強く感じた。三人もの美しい女性と同時に付き合うバツイチモテ男の当馬が、余命を周りに知らせ、それでも自分の子供を産んでくれる女性を探す。これは、女性からすると、強烈な要求だと思う。

シングルマザーとなることを前提として、子供を産む覚悟がなければならない。モテ男だけに、女性に不自由はしないが、人生の最後が目の前に迫った時、最後まで一緒にいたいと思わせる女性は存在するのか。死への恐怖よりも、女性との付き合いに重きを置いた作品だ。

■ストーリー

芸能界への登竜門「スタリオンボーイグランプリ」でデビューし、「種馬王子」の異名を持つ小早川当馬。俳優として着実にキャリアを積み、プライベートも好調だったが、体調不良をきっかけに訪れた病院で、がんの宣告を受ける。余命1年の当馬に、いったい何ができるのか?人生最後のステージが、今、幕を開ける。

■感想
余命1年を宣告されたとしたら、人はどのような行動をとるのか。俳優として、自分の人生をかけて映画へ挑戦するのか。それとも、余生を大事な家族と過ごすのか。死への恐怖よりも、死ぬまでにどのようなことができるかが描かれている。

抗がん剤の治療を続けながら、主演映画に挑戦し、自分の子供を産んでくれるパートナーを探す。迫りくる死の恐怖をふりはらうように精力的に動く当馬だが、それは周りのサポートがあってこそなのだろう。自分のガンすらも、映画の宣伝へと利用するその根性も本作の特徴だ。

俳優という職業だけに、容姿の問題は大きい。そこでポイントとなるのが抗がん剤の治療だ。影響なければ、周りからは病気には見えない。が、少しでも合わない場合は、激しい副作用に苦しめられることになる。

マスコミに登場するガン患者は、恐らく当馬のように、治療の初期段階なのだろう。何かしら制限はあるが、見た目上は健常者となんらかわらない。それが末期になると…。本作は、予定調和的にガンがすっきり治るなんてことはないのが、リアリティある流れだ。

映画を成功させること。子供の出産に立ち合うこと。この二つを目標に生きる希望を見出した当馬だが、やはり何事も映画に宣伝に使おうとする執念がすさまじい。そして、周りの者たちの対応も、冷たいように感じるが、これがガン患者周辺の日常なのだろう。

目の前で仲間が弱っていくとしても、それはすでにわかっていたこと。何より、当馬の希望である映画を成功させるために、あらゆる手段を考える。もし、当馬の家族だったら、かなり怒りがわいてくる場面かもしれない。

余命1年を宣告され、明確な目的が持てるのは、ほんの一部の人だけだろう。



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