UFO大通り 


 2014.2.26    冴える遠隔推理 【UFO大通り】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

御手洗シリーズ。「UFO大通り」と「傘を折る女」の二つの中編が収録されている本作。UFO大通りは、奇妙な死体の存在とその近所に住む老婆が見たUFOから宇宙人が降りてきて戦争を始めたという証言がポイントとなる。何かを誤認識しているのは確実だが、その何かがわからない。

宇宙人同士の戦争という荒唐無稽な出来事を、どのように現実的な答えとして示すのか。そのほかにも、ヘルメットとゴム手袋という完全防備の状態での死体など、状況説明が困難なものばかり。読者はこれらを想像をするのだが、謎を解くのは難しいだろう。オチはかなり現実的なもので、老婆が宇宙人の戦争と勘違いしたのも納得できる流れだ。

■ストーリー

鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理はいかに!?「遠隔推理」が冴える、中編「傘を折る女」も収録。

■感想
「UFO大通り」は、完全防御状態の死体と宇宙戦争がポイントとなる。老婆が見た宇宙戦争とは何だったのか。普通ならば、ただのボケ老人のたわごとだと聞き流すところを、御手洗は親身になって聞き推理する。事件の捜査を行う刑事が、ガチガチの江戸っ子気質で昔ながらのチンピラ刑事なのが良い。

威勢よく御手洗につっかかり、あっさりと御手洗に論破される。二人の言い合いは、小憎らしいまでに御手洗の圧勝となる。事件のオチとしても、老婆が宇宙人と勘違するのもしょうがないと思える流れだ。

「傘を折る女」は特殊だ。ラジオ番組で、雨の中、傘を車に轢かせる奇妙な女がいたという放送が流れる。それを聞いた石岡は御手洗に話すのだが…。ひとつの奇妙な行動を聞くだけで、すべてを想像してしまう御手洗のすさまじさ。そして、事件の真相。

偶然が重なった上での女の不運は同情にあたいする。そして、バスジャック事件でひとりバスを抜け出した者への怒りというのは伝わってきた。純粋に犯人が悪いという感情にはなりえない物語かもしれない。

ふたつの作品とも、原因不明の死体の死因は同じだ。このパターンだと、外傷もなく持病もないのにいきなり死んだことになる。偶然にも同じ原因のミステリーである「雀蜂」を最近読んだので、この手のパターンには慣れている。が、冷静に考えれば、それなりに司法解剖すればあっさりと原因は判明するのだろう。

この手を使えば、第一印象だけは、不可解な死体となる。強烈なインパクトはないが、奇妙な印象を残し、読者を引き付けるポイントとなるのだろう。

どちらも相変わらず御手洗の遠隔推理が冴えている。



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