2014.3.16 透明人間になれる薬 【透明人間の納屋】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
透明人間になれる薬があるのか。ある女性の蒸発事件が発生し、完全に監視された部屋からどうやって抜け出したのかがミステリーとなる。事件の詳細が明らかになればなるほど、透明人間になれる薬の存在を信じないわけにはいかない。ミステリアスな事件は解決し、犯人は明らかとなるが、部屋から抜け出した方法は依然謎のまま。女が全裸で外にいたという証言から、より透明人間の薬を考えずにはいられない。
事件から26年後に真相が判明するのだが、ここまでのワクワクドキドキ感はすさまじい。ただ、真相が判明するとがっかり感がすさまじい。物理的に消える透明人間の存在を暗示しつつ、物語の根底には存在のあいまいさがある。
■ストーリー
昭和52年夏、一人の女性が密室から消え失せた。孤独な少年・ヨウイチの隣人で、女性の知人でもある男は「透明人間は存在する」と囁き、納屋にある機械で透明人間になる薬を作っていると告白する。混乱するヨウイチ。やがて男は海を渡り、26年後、一通の手紙が届く。そこには驚愕の真実が記されていた。
■感想
少年ヨウイチは、近所に住む真鍋にあこがれ、真鍋の言う「透明人間になる薬」に興味を惹かれてしまう。ヨウイチと真鍋の関係が本作のポイントだろう。父親のいないヨウイチにとって、真鍋はまさに父親代わりの存在となる。
宇宙の成り立ちから地球の自転まで、ワクワクするような話をヨウイチに聞かせる真鍋。ふたりの関係を読んでいると、幸せな情景しか思い浮かばない。ただ、それがのちの真鍋の境遇を考えると、束の間の幸せなのだと思わずにはいられない流れだ。
真鍋の妹が突然蒸発する。誰にも見られず抜け出すのは不可能な部屋から突然の失踪。事件はミステリアスな展開となり、容疑者が絞られ、やがて犯人が逮捕される。が、女が部屋から抜けだした方法は依然謎のまま。ミステリアスな事件は解決したが、作中では謎が残ったまま。
読者は「透明人間になる薬」の存在を刷り込まれているので、事件の細部が明らかになればなるほど、透明人間の仕業だと考えてしまう。そんなオチはありえないと思いながらも、状況的に透明人間以外にない!というところまで突きつめられている。
事件の真相は26年後に明らかとなる。確かにすべてのトリックが判明するのだが、正直がっかりしたというのが感想だ。そのまま透明人間がオチというのはありえないとしても、何かしら衝撃的なトリックがあるかと期待してしまった。
物語として当時の世相を反映しており、物理的な透明人間ではなく、人間的に透明な存在というのを主張したいようだ。自分の存在が透明となりうるような状態というのは、どのような心境なのか。その思いがヨウイチへの対応へ反映されたのだろうか。
透明人間がオチというのを7割くらい考えてしまった。
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