2014.2.13 虎は都市では生きられない 【都市のトパーズ2007】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
都市空間と虎というミスマッチを物語として成立させるため、多少強引な手法ではあるが、面白いこころみだ。ただ、いつもの作者の作品と毛色が違うことは確かだ。東京の道路事情をメインとして、都市がどのような末路をたどっていくのか。作者の主張がかなり強烈に描かれているため、物語よりも主張の方が印象に残っている。
高速道路の有料化は、天下り官僚たちの私腹を肥やすため。関東大震災や空襲で都市がリセットされたタイミングで、都市計画を見直すべきだったなど、納得できる主張が盛りだくさんだ。虎は都市には住めない。あえて都市に虎を登場させることで、自然への渇望を描いているのだろうか。知的好奇心が刺激させられる作品だ。
■ストーリー
定年を前に人生に倦んでいた男は、自らの前に現れた美しい虎を、神々しいまでに崇高な野生と感じた。閉塞した都市空間において、その生は奇跡であり忘れていた闘いへと彼を誘うのだった。虎がやがて大きな飛翔を見せるとき、彼は人生最大の決断を迫られた。知的ダイナミズムに富んだ、都市寓話の決定版。
■感想
都市の道路事情について、作者なりの主張が描かれている。入り組んだ都市空間に無理やり構築した首都高速。海外の都市と比べ、異常に高額な利用料。それらは、天下り先を確保したい官僚たちによって作られた制度だということ。
確かに今の東京の道路事情は異常だ。あたりまえに発生する渋滞。高騰する地価。すべては都市計画の失敗が原因だと語る作者。それらは、物語内の一部としてかなり強烈に主張されているのだが、この主張が強すぎて、肝心の物語の印象があまり残らない。
都市で成長した虎のトパーズ。小さな時期はかわいいペットでしかないが、成長するととたんに人間にとって脅威となる。都市に現れた虎は、都市生活になじむはずもない。檻から逃げ出した虎は、東京中を走り回り、逃げ続ける。都市と虎は相成れない。
イメージとしても違和感はある。が、それをすることで、都市に対して警告を与えているのだろう。新宿御苑や皇居など、東京には緑が沢山ある。が、それらが一般人進入禁止のエリアとなっていることについても、不満があるようだ。
道路のからくりや、過去、道路を整備する絶好のタイミングが何回かあったが、それを逃してきた経緯など、興味深い部分がある。他の都市と比べたときに東京は何がダメで何が良いのか。作者の考えは確かに正しいのかもしれない。
歴史的事実や、都市の成り立ちなど、興味深い内容も多々ある。が、物語として成立しているかは微妙だ。虎が何かの象徴として描かれているのか。結局都市はどうなるのか、都市はどうしていかなければならないのか、結論はでていない。
作者の強烈な主張を感じることができる作品だ。
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