ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男


 2014.7.26     詐欺師の鑑 【ザ・ホークス ハワードヒューズを売った男】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
ハワードヒューズの偽自伝をでっち上げ、売った男。普通に考えれば、有名人の自伝を勝手に書けば、本人に訴えられ、すぐに詐欺だと気づかれるはずだ。それを実行しようとした理由は、ハワードヒューズが変わり者で、マスコミに姿を現さないからだ。最初は半信半疑だった詐欺が、いつの間にか現実のものとなる。

騙しているはずのアーヴィング本人が、いつの間にかハワードヒューズになりきり、すばらしい偽自伝を完成させてしまう。嘘がバレそうになると、偶然から危機を乗り越える。嘘を貫き通す精神力の強さと、信じられないような強運により本を完成させてしまう。詐欺事件が判明するまでのドキドキ感はすさまじい。周りからどれだけ怪しまれようと、勢いで煙に巻くその姿は、まさに詐欺師の鑑だ。

■ストーリー

伝説の大富豪ハワード・ヒューズの“偽りの伝記”を売った男の史上最大の詐欺事件を描く!売れない作家クリフォード・アーヴィングは、新作を出版社に売り込んでは却下される日々を送っていた。ある日、友人でもある大手出版社のアンドレアに“今世紀最大”の作品を持ってくると言ってしまう。実は何のプランもなかったが、大富豪でありながら変わりもので姿を見せないハワード・ヒューズのニセ自伝を書くことを思いつくが…。

■感想
姿を見せない大富豪の偽自伝を書こうと画策する男アーヴィン。なぜか突然自分に電話がヒューズからかかってきたという、突拍子もない嘘から始まるのだが、周りは信じてしまう。アーヴィンの自信満々な物言いは、他者を引き付ける力がある。

詐欺のパートナーであるアンドレアですら、うまくいかないと考えていた詐欺事件を見事に成功させてしまう。アーヴィンの行動力と、他者を分析する力はすさまじい。が、アーヴィンに騙される出版社が間抜けだ。いくら伝説の大富豪の自伝と言っても、いかにも怪しすぎる連絡方法には疑問を持ちつつ、受け入れてしまう。

何度か出版社に疑われるシーンがある。無名な作家であるアーヴィンがなぜヒューズと連絡をとれるのか。高額な報酬と、姿を見せないヒューズに危機感を覚えつつも、アーヴィンの勢いに押されてしまう。アーヴィンのくそ度胸には驚かされる。ヒューズ本人が出版社に電話する段階であっても、まだしらを切り通す。

自分は正しく、他がすべてでっち上げだという主張はすさまじい。まさに自分がでっちあげているのだが、自分のことは棚に上げ、他者を糾弾し本が出版できないと脅す。とんでもない強心臓の持ち主だ。

最後はお決まり通り、すべてが暴露される。どれだけ絶望的な状況も切り抜けてきた男が、最後は観念するしかない。ここ最近のSTAP細胞や耳が聞こえない作曲家の話もそうだが、本人たちは嘘を嘘だと思っていないのだろう。

アーヴィンは、いつの間にか幻想のハワードヒューズを作り上げ、自分がそれになりきっている。優れた詐欺師というのは、言い換えれば極端に思い込みが強い人間なのだろう。アーヴィンの雰囲気からすると、懲りずにまた同じようなことを繰り返しそうだ。

あまりに大きすぎる嘘は、周りを「まさかこんな嘘は」と思わせる力がある。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp