ザ・バンク 堕ちた巨像


 2014.7.31     生き物のような巨大組織 【ザ・バンク 堕ちた巨像】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
巨大銀行の不正を暴こうとするインターポールのサリンジャー。そして、検事のエレノア。二人が不正の決定的な証拠を握った人物を見つけるたびに、その人物が殺されていく。とてつもなく巨大な組織に相対した場合、様々な圧力がかかり捜査はうまくいかない。サリンジャーの独断で新たな証人を見つけ出すのだが…。

巨大銀行がどのようにして資金を得ているのか。そして、関わる人物たちの、世界を支配しているといった雰囲気がすさまじい。そんな組織に、少ない人員で対向しようとするサリンジャーは無謀でしかない。結局のところ、巨大すぎる悪にはあらがうすべがない。例えトップを倒したとしても、また別の人間がトップになるだけ。正義の無力さを感じさせる流れだ。

■ストーリー

世界の富裕層から莫大な資金が集まる、欧州を代表する巨大銀行IBBC。しかし、その取引には、ある違法行為の疑いが・・・。ニューヨークの検事局のエレノア・ホイットマンと共同で捜査に乗り出した、インターポール捜査官のルイ・サリンジャー。ベルリン、リヨン、ルクセンブルク、ミラノ、ニューヨーク、そしてイスタンブールへ。

次々と消されていく証人や証拠に翻弄されながら、彼らの追跡は国境を越えていく。世界屈指のその銀行の資金は、いったい何処から流れているのか。核心に近づくたび断ち切られる、真相解明の糸口。サリンジャーは、強大な権力をまとったメガバンクに、一人で立ち向かう決意をする。そして、真実を暴くため、彼は法の粋さえ越えようとしていたー。

■感想
サリンジャーが立ち向かうのは、とてつもなく巨大な組織だ。サリンジャーやエレノアの上司から捜査中止の圧力がかかる。証拠を手にした仲間が、いつの間にか消されており、確信に近づいた者には、危険が迫る。謎の殺し屋の存在や、巨大組織同士の駆け引き。

そして、戦争を商売として世界を牛耳ろうとする組織。巨大組織は、その組織が巨大化しすぎたため、ひとつの計画のずれも許されない。取引が失敗すれば、それはすなわちすべての破滅につながることになる。

組織に雇われた殺し屋や組織の幹部でさえも、あっさりと消されてしまう。それはIBBCという巨大銀行を生かすための自浄作用なのだろう。殺しを依頼した者が、次の場面では殺されている。組織の長たる人物は存在するのだが、その人物がたとえ殺されたとしても、別の人間がその椅子に座るだけ。

サリンジャーとエレノアの捜査がうまくいっていたとしても、外部の圧力でとん挫することになる。ラストでは、サリンジャーがすべての危険を承知で、単独で事態を打開しようとする。エレノアを危険から遠ざけるための男らしさはすばらしいが、無謀に思えてしまう。

結末は非常にモヤモヤとする。IBBCの頭取の取引場所で、サリンジャーは証拠をつかもうとするのだが…。ひとつの歯車が狂ったことで、次々と命が失われていく。ついさっきまで絶大的な権力を持っていた男が、あっさりと殺され、別の男が権力を握る。

人の存在自体はあまり問題ではないのだろう。IBBCという銀行自体がまるで生き物のように、自分が生き残るために意志を持っているようにすら感じてしまう。結局のところ、サリンジャーたちの奮闘と、今までの犠牲はすべて無駄だという流れだ。

これが現実なのだろう。



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