2014.10.12 医療ミステリー短編集 【玉村警部補の災難】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
バチスタシリーズの加納警視正と玉村警部補が事件に挑む短編集。この刑事コンビの印象は、本編シリーズではあまりなかった。結局のところ、警察が主役として医療に関係した事件が起こるので、それをふたりが解決するという流れだ。3つの短編のうち2つは、がっつり医療に関する事件だ。
「青空迷宮」だけ、医療に関係がない。ミステリーとしてのトリックはそこまで衝撃的ではない。特別、このふたりのキャラで行く必要があるかというと微妙だ。「エナメルの証言」は、作者の本領が発揮され、警察組織と医療とが入り混じるすばらしいミステリーとなっている。加納警視正がトリックを見破り、めでたしめでたし、という終わり方でないのも良い。
■ストーリー
正月特番用のバラエティ番組収録中、巨大迷路内でタレントが殺された。カメラが設置された密室での犯罪が加納と玉村を待ち受けるが、加納の論理的推理が炸裂する(「青空迷宮」)。「チーム・バチスタ」シリーズの加納警視正と玉村警部補が難事件に挑む。
■感想
「青空迷宮」は、本シリーズのキャラを使う意味はあまりないのでは?と思える短編だ。巨大迷路でタレントが殺された。はるか遠くから何者かに矢を放たれたのか…。巨大迷路におけるカメラの役割が、トリックを成立させている。
バチスタシリーズで加納警視正の印象はあったが、玉村警部補の印象はない。本短編がキャラ付けの役割かと思いきや、そうでもない。ごく普通のミステリーとしては成立しているが、バチスタシリーズの色というのは、ほとんど出ていないような気がした。
「四兆七千億分の一の憂鬱」は、DNA捜査における問題点を指摘した短編だ。ある事件の犯人がDNAにより判明したのだが…。確率としてDNAが一致すれば犯人に違いない。ただ、元となるDNAが犯人の物なのか…。
根本的な話をしてしまうと、普通のミステリーになってしまう。恐らく、現実に起こったDNA捜査による冤罪事件の影響を受けた短編なのだろう。DNA検査による人物特定は正しくとも、DNAが犯人のものでなければ意味がない。分かりやすいと言えば、分かりやすい。
「エナメルの証言」は、まさに本作にふさわしい短編だ。ある暴力団の幹部たちの焼身自殺が相次ぐ。焼け焦げた死体は、歯から本人と認定されたのだが…。本人確認を行うのは、歯の治療跡から。となると、現実問題として、他人の死体の歯を誰かが細工すれば、別人が死んだことにできる。
恐らく実現可能なのだろうし、現実にあるかもしれない事件だ。本短編のすばらしいところは、加納警視正たちが事件をすべて解決し、終わりとならないところだ。このあたり、医者のこだわりを感じてしまう。
バチスタシリーズとは別物だが、シンプルで読みやすい短編集だ。
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