白い家の殺人 


 2014.2.24    予想外の出来事が密室を生む 【白い家の殺人】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
信濃譲二が探偵となるシリーズ第二弾。雪深い別荘で逆さ吊り死体が発見され、別荘は恐怖の渦に巻き込まれる。資産家の別荘に集まる関係者たち。あととりをめぐる争い。後妻にお手伝い一家にお抱え医師。すべてがミステリーを語る上でおあつらえ向きの状況だ。ゾロアスター教にはまる長男や、気難しいおばさん。ひと癖もふた癖もあるキャラたちに囲まれ、家庭教師として徹が狂言回し役となる。

あととり争いか昔年の恨みなのか、ミステリーの定番として、犯人は絶対に別荘内に存在するというのはわかる。が、誰が犯人で、どのような動機の元に実行したのかはわからない。事件の状況がかなり特殊なだけに、大掛かりな仕掛けというのは容易に想像できる。

■ストーリー

冬の八ヶ岳山麓の別荘で、猪狩家の令嬢・静香が逆さ吊り死体で発見された。凄惨な密室殺人は別荘を恐怖の渦に巻き込み、そして第二の被害者が出てしまう…。一冊の日記帳によって明らかになる猪狩家の悲しく暗い過去。事件解決に挑む青年探偵・信濃譲二は完全犯罪を暴けるのか!?

■感想
資産家の家族が親類と共に別荘でくつろぐ場に、突然登場した逆さ吊り死体。密室の上に、成人女性を逆さ吊りするのは簡単ではない。大掛かりなトリックが予想され、外部の人間の仕業というお決まりなミスリードは、すでに定番なのだろう。家庭教師として偶然その場に居合わせた徹が、事件解決のため、信濃譲二を呼び出す。

前作の流れのまま、譲二がいつの間にかすばらしい探偵のような扱いになっている。徹と譲二が登場することで、シリーズとして成立しているが、譲二のキャラは読めば読むほど島田荘司作品の御手洗潔にそっくりと思えてしまう。

事件はお決まり通り第二第三の殺人が起こる。ここでも譲二は100%確実になるまで種明かしをしない。容疑者の存在を徹がひたすらアピールするのだが、譲二はそれを否定するだけして、答えを示さない。ストレスがたまる展開なのは間違いないが、結論が気になり読むスピードを思わず加速させてしまう。

死体が空中に浮かびあがるだとか、誰が飲むかわからないコーヒーカップにどのようにして毒を混入したのか。徹が絶妙にむちゃくちゃなトリックを考えるので、読者もそれにひっぱられるが、結末は非常にシンプルだ。

ミステリーでは、犯人はある程度目的を達成するというのが定番だが、本作は不可抗力により実は失敗していたというのがポイントだ。まさか、失敗したことにより、より複雑な結果となるとは皮肉なことだ。

警察に調査を依頼できないことや、ある容疑者の存在が犯人にとっては結果オーライとなり、徹たちからすると不可能殺人のように思えてくる。それら条件を照らし合わせ、解決するのが譲二なのだが、キャラとしての特徴がまだよくつかめていない。

ラストに語られる動機が一番の衝撃かもしれない。



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