サイドカーに犬


 2014.6.9     ノスタルジックにひたる 【サイドカーに犬】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
年代的に近いためか、ノスタルジックな気分になってくる。母親が家出をし、突然やってきた父親の愛人ヨーコ。小4の薫からしたら、ヨーコと父親の関係を理解できたはずだ。普通ならばぎくしゃくするはずが、ヨーコと仲良くする薫と弟。今、30代後半の人には、懐かしく感じる風景ばかりだ。250mlのコカコーラに始まり、野球放送では江川が投げる。

ヨーコの自由奔放な雰囲気と、今まで縛られて生活してきた薫たちは、一気に解放されたように感じてしまう。麦チョコを買う際に、二つあるうちどちらを買うか迷ったとき、ヨーコがあっさりと二つとも買ってしまう。その豪快さに薫は惹かれていく。父親の愛人という微妙な立場であっても、薫とヨーコの親密な関係は、物語の面白さとなっている。

■ストーリー

80年代初頭を背景に、小学4年生の少女・薫と、自転車に乗って突然やって来た父親の愛人・ヨーコが過ごす刺激的なひと夏をノスタルジックに綴る。

■感想
懐かしい風景と雰囲気だ。映像を見ると思わず懐かしさで涙が出てきそうになる。そういえば、自分の子供のころはこうだった、という思い出がよみがえる。いい加減な父親とヒステリックな母親。そして、突然やってきた豪快なヨーコ。薫たちからすれば、まったくの部外者のはずが、いつのまにかヨーコはその環境に溶け込んでしまう。

自由奔放で、子供たちに対しても自由な振る舞いを求めるヨーコ。母親とは違うが、決して嫌悪すべき部分はない。ヨーコが父親の愛人と思わせる雰囲気をあまりだしていないことが、さわやかな雰囲気と感じさせるのだろう。

中古車販売業を営みヤクザと付き合い、危ない橋を渡る父親。薫からすると、父親も不満材料のひとつかもしれない。そんな時に、すべてを覆いつくすようなヨーコが存在したとしたら、自然とヨーコの方へ流れていくのだろう。

ヨーコと海に出かけた時、宿のおばさんから誘拐されたのか?と言われ、とたんに心配になり家に電話をかけるあたり、薫の神経質な面が表現されている。大人となった薫が、身持ちの堅い女として生活してきたのは、ヨーコと父親の影響が大きいのだろう。

なんてことない物語だが、目を離すことができない。なんでも真剣に考える薫と比べ、無邪気にその状況を楽しむ弟の存在が対比となって平和な家庭像として成立している。ヨーコが何かを求めていたわけではなく、父親も何かを目指していたわけではない。

日々生活していく中で、たどり着いた結末をそのまま受け入れているだけだ。場面は現代へと変わり、薫は独身のまま30を迎える。弟が結婚することになり、それを契機に過去を思い出す。決して幸せな幼少期とは言えないが、薫の人生に大きな影響を与えたヨーコの存在が強烈に描かれている物語だ。

80年代に思い入れがある人は、懐かしく感じる映像盛りだくさんだ。



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