蝉しぐれ


 2014.9.24      文四郎少年がかっこよすぎる 【蝉しぐれ】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
若いころの文四郎がすばらしくかっこよい。下級武士である父親を尊敬してやまない文四郎。前半は、文四郎の少年時代が描かれており、そこで隣家の娘であるふくに恋心をいだく。少年時代の文四郎は、自分の思いを素直にふくに伝えることができない。そのぶっきらぼうな態度がなんともいじらしい。仲間思いで、父親を尊敬し、義理堅い。

父親が無実の罪で腹を切らされたとしても、じっと耐え忍ぶその姿が、本作のすべてなのだろう。この少年時代の文四郎に比べると、成長した文四郎というのは、表情のせいか、やけに優男で頼りなく感じてしまう。誇り高き父親の後を継いだはずが、物語としてはすばらしい男のように描かれているが、ちょっと弱弱しく感じてしまった。

■ストーリー

江戸時代末期、東北の小藩・海坂(うなさか)藩。下級武士の父・助左衛門と母・登世と暮らす15歳の牧文四郎は、仲の良い友人と共に日々、剣術と学問に励んでいた。隣家の娘・ふくに文四郎は淡い恋心を抱いていたが、ふくもまた文四郎を慕っていた。そんなある日、藩内の争いに巻き込まれた父は謀反の罪に問われ、切腹を言い渡される・・・。

■感想
少年時代の淡い恋心を心にとどめたまま、成長し運命の再会を果たす。純愛というよりも、時代における身分の差の悲劇といった方が良いのかもしれない。少年文四郎がすこぶるかっこよく。ふくとほとんど言葉を交わさないまでも、お互いが惹かれあっているのは容易に想像ができた。

そして、仲間との交流や、父親が無実の罪で腹を切らされると分かった時の苦しげな表情がたまらない。歯を食いしばり、父親の死体を運ぶシーンが、本作のピークなのかもしれない。

成長し青年となった文四郎は、剣の腕は上達したようだが、表情に力強さがない。それは単純に演じる俳優の表情のためなのだろうが、少年時代の芯の強さのようなものが薄れたような気がした。物語としては、文四郎は変わらず義理堅い男で、藩命にそむくことができず悩み苦しむ。

再開したふくが一気に手の届かない場所へ行ってしまったことへの苦悩は計り知れない。本来なら、文四郎の隣にはふくがいるはずなのだが…。運命のいたずらというのか、強烈な悲しみがそこに漂っている。

文四郎は剣の達人なのかどうなのか…。いきなり複数人を相手に大立ち回りを行う。このあたり、文四郎の剣の腕がどの程度か微妙な印象を受けた。圧倒的な力を持つという描写がなかっただけに、火事場のバカ力的な印象がある。仲間と協力しふくを救いだし、その後は…。

観衆が希望するのは文四郎とふくが寄り添うことだが、それはありえない。身分の違いと、すでに文四郎には家族がいる。それがわかっていながらも、ふくが口にする言葉というのは、あまりに悲しすぎる。

悲しい恋物語といえば良いのだろうか。



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