2014.11.9 正体不明の武器、星籠 【星籠の海 上】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
複数の物語が複雑にからみあい、何か大きな事件が起きているのでは?と思わせる雰囲気はある。死体が流れ着く湾。ここから始まる物語なのだが、基本はこの死体が誰の死体でなぜ流れ着いたのかがミステリーとなる。上巻では、まだミステリー要素は強くない。そして、死体の流出元と思われる広島の福山市周辺での物語がつづられている。
女優をめざし、事故にあい逃げ帰った女の物語や、新興宗教関連の物語。どれも、最終的には死体流出につながるように思えてしまうが、まだその詳細はみえてこない。複数の物語がどこで繋がっていくのかがポイントなのだろう。歴史の謎を盛り込み、御手洗の冴えた推理が物語を加速させる。ミステリー要素が少ないのが気になるところだ。
■ストーリー
瀬戸内海、松山沖に浮かぶ興居島の湾に、連続して死体が流れ着く―奇妙な事件の調査を依頼された御手洗潔は、石岡和己とともに瀬戸内へ。解決への鍵を求めて訪れた場所は、古代より栄えた「潮待ちの港」、鞆の町を擁する広島県の福山市だった。
しかし、御手洗たちの到着直後に発生した死体遺棄事件にはじまり、鞆もまた不穏な気配を漂わせていた。これは瀬戸内を揺るがす一大事の兆しなのか!?古からの港町に拡がる不穏な団体の影―怪事件の続く「時計仕掛けの海」に、御手洗潔が挑む!
■感想
瀬戸内海の海流に乗り、流れ着く死体。なぜこれほど多くの死体が流れ着くのか。その謎を解くのが御手洗なのだが、早い段階で御手洗は流出元を見つけ出す。広島の福山市周辺で何かが起きていると匂わせつつ、物語は別の人物の視点へと移っていく。
本作では複数の視点による物語がある。同級生に誘われ演劇にのめり込む男や、いじめにあう少年、そして、少年を保護する男や、歴史を調査する准教授などだ。どれもが新興宗教の匂いを感じさせる流れとなっている。
上巻の終盤にさしかかると、何かしら先が予想できてしまう。死体が発生した原因は何か?なぜ、捜索願いがでないのか。福山市近辺で不穏な動きがあり、それに関わるように他の物語も福山市へと近づいていく。イジメを受けていた少年は、宗教にはまっていた母親を亡くす。
演劇の夢が破れた男は、同じく女優の夢が打ち砕かれた同級生と故郷に帰ってくる。不幸な出来事が宗教へとつながっていくのだろうか。まったく関係ないと思われた物語が、次第に御手洗たちが調査する事件へとつながっていくのは快感かもしれない。
本作では、戦国時代の水軍の戦いや、黒船との戦いについて独自の解釈が描かれている。歴史を調査する准教授との絡みで、御手洗が歴史の謎を解き明かす。正直、このあたりの戦国時代の水軍の戦いについてほとんど知らないので特別な衝撃はない。
鋼鉄の船すらも沈めてしまう、謎の星籠とはどんな武器なのだろうか。そのあたり、下巻で明らかになることだろう。ミステリーの要素が少ないのだが、それを周辺のドラマで補っている。様々なドラマがどのように繋がり、解決していくのか。そのあたりも楽しみのひとつだ。
ミステリー的な謎というよりも、物語の繋がりが気になってしまう。
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