さよなら、クロ-世界一幸せな犬の物語


 2014.8.12      ノスタルジックな気分 【さよなら、クロ-世界一幸せな犬の物語】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
学校に犬が迷い込むのはよくあったように記憶している。そんなよくあるシチュエーションから、犬が学校に住みつき、そして12年間にわたり生徒たちと交流したクロの物語。クロ中心のお涙ちょうだい物になるのかと思いきや、そうではない。そこで生活する生徒たちの恋愛や、悩みがメインとなっている。

卒業生が学校へやってきて、クロの最後を見守る。ただの犬にここまでしたのか?と思ってしまうが、すべてが実話ということに驚いた。ノスタルジックな気分にさせる映像と、クロの純粋でキラキラした目を見ると、心が温かくなる。今の時代では、こうはならないだろうと思わせる懐かしさに満ちている。野良犬がほとんど存在しない都会ではありえない出来事だろう。

■ストーリー

ある高校にさまよいついた1匹の黒い野良犬。その犬はクロと名づけられ、用務員室に寝泊まりし、夜は用務員と一緒に校内を見回り、時には職員会議にも出席しと、学校の一員として飼われ続けた。そんなクロは、自分のせいで友人だった男性が死んだと思い、自殺しようとした3年生の雪子をも助ける…。

昭和36年頃に長野県の松本深志高校に住みつき、12年間にわたって生徒たちと学園生活を送った実在の犬クロ。そんなクロに関わる人間たちの姿を追った作品。

■感想
学校に迷い込んだ犬を主人公に物語を描くのかと思いきや、そうではない。クロを中心としているが、生徒たちの恋愛模様がメインに描かれている。三角関係の典型として、ひとりの女生徒をふたりの男子生徒が奪い合う。そして、結末は…。

男女関係がそれほど進んでいない昔ならではの雰囲気だ。どちらも好きとは言えず、あいまいなままグループで遊びに出かけていたのが、ひとりが抜け駆けしたことで、そのバランスが崩れてしまう。悲劇的な結末を迎えるのも物語を盛り上げている。

昭和30年代はこんな雰囲気だったのだろう。かなり純朴な雰囲気もそうだが、田舎ということもあり、擦れていない。生意気さは感じるが、無気力感や排他的な雰囲気がない。ちょっと不良な少年にしても、心はやさしい。まさに、絵に書いたような田舎の不良だ。

後輩からはカツアゲするくせに、クロのために、募金箱を作ったりもする。用務員室に寝泊りするクロが病気になったからと、職員会議にかけるあたり、やはり時代や土地柄を反映しているのだろう。

現実として、犬の葬式まで行うのには驚いた。そこまでやればニュースになるのだろう。実際に同じように学校に犬が住み着いたパターンはあるだろう。ただ、ここまで生徒や教師たちに愛された犬というのは、クロだけなのかもしれない。

タイトルどおり、世界一幸せな犬ということは間違いない。クロを中心とした人間関係も、10年後に同窓会的に集まり、変化していく様が面白い。微妙な関係だった二人が、年を経て大人になり、お互いを理解する。なんだか理想的な同窓会の雰囲気だ。

クロは中心ではあるが、主役ではない。



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