最後の忠臣蔵


 2014.12.23      死よりも辛い使命 【最後の忠臣蔵】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
赤穂浪士として死ねなかった二人の男を描いた作品。方や公に赤穂浪士の生き残りとして世間に認知された男と、方や討ち入り直前に逃げ出した烙印を押された男。主君のために名誉の死をとげるのは簡単なこと。最も辛く厳しいのは、生き残り使命をまっとうすること。

役所広司が孫左衛門を好演している。主君の娘を預かり、一人前に育て上げる。その姿はまるで父親のようでありながら、常に敬語を使い、一歩下がった位置へいる。父娘のようでありながら、娘からは恋のような気持ちを打ち明けられる。なんだか孫左衛門と可音の関係はよくわからない。ただ、使命をまっとうする男のかっこよさというのを感じずにはいられない。

■ストーリー

吉良邸討入り後、苦しみながら生き抜いた16年の歳月に隠された感動の結末が明かされる!赤穂浪士として名誉の死を果たせなかったふたりの男が、忠義を貫き私心を捨て、自らに課された使命を全うするべく生き抜いた過酷な人生を紐解く。

■感想
赤穂浪士の生き残りの男は、事件の真実を後世に伝えるために生き続ける使命を受けた。表だった使命であり、誰もがその存在に納得する。同じく主君より密命を受けてはいたが、人知れず極秘任務をひたすら実行し続けた男がいた。

浪士の遺族を援助する吉右衛門の凛とした表情は、使命をまっとうする生き生きとした男の表情だ。誰にはばかることなく、自分のやるべきことがはっきりしている男の表情でもある。対して孫左衛門は、素性を隠し細々と生活し、その表情には力がない。このふたりの対比が効果的だ。

観衆は孫左衛門が何か使命をおっていると気づくが、その内容がはっきりしない。傍らに存在する可音という娘の存在が、何かカギになると思いつつはっきりしない。中盤から可音こそが孫左衛門の密命とわかると、そこに親子以上の絆があることが伝わってくる。

可音に良い縁談話が舞い込んだ時、孫左衛門は躊躇する。その時の孫左衛門の気持ちはどうだったのだろうか。娘を嫁にやる父親の気持ちが多少はあったのだろう。その後、ふたりの関係の微妙さに気づくことになる。

可音が小さいころから孫左衛門は可音をお嬢様として扱い、常に敬語で接っしてきた。対して可音も孫左衛門を使用人と同じような扱いをしている。父親のような存在でありながら家来のように扱う。果たしてこの時の可音はどのような心境なのか。

その後、感動の別れとなり、最後は使命を果たした孫左衛門の大仕事が描かれる。ザ・侍というか、主君のために命を投げ出すのは当然として、命を捨てるよりも困難なこともいとわない孫左衛門の心意気には圧倒されるばかりだ。

常にボロボロの孫左衛門は、憐れみを誘う風貌をしている。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp