雷桜


 2014.10.14      とてつもなくでかい身分の差 【雷桜】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
徳川家に生まれ、うまくいけば将来の将軍の目もあるような男が、山で育った娘に恋をする。斉道と雷の出会いは衝撃的で、あえて好き好んでボロをまとった雷に恋をする斉道は、どこか歪があるのだろう。斉道は、時に取り乱し、まわりからは”うつけ”と隠れて呼ばれていた。斉道が突如として取り乱し、そして昏睡する謎の病でなければ、ふたりは近づくことはなかっただろう。

偶然の要素と、普通とは違う自分自身をかんがみての行動なのか。雷が斉道に熱を上げるのはわかる。突然、徳川の殿様から愛を打ち明けられれば…。ただ、山で育った雷だからこそ、身分の違いを意識せずに斉道と近づくことができたのだろう。二人の境遇が二人を近づけたと言えなくもない。

■ストーリー

徳川家に生まれた斉道は、ある日家臣から聞いた「瀬田村の山には天狗が住んでいる」という話を確かめに村へ向かう。すると山には自由奔放な少女・雷がおり…。

■感想
ボロをまとい、激しく攻撃してきた天狗と思わしき謎の人物は、その昔、さらわれた瀬田村の娘だった。斉道が雷と出会い、そして、その出自を知ってもなお、雷に恋をする。斉道が雷に恋をする必然性を説明するには、斉道が”うつけ”と呼ばれた男というのを外すことはできないだろう。

母親からの遺伝なのだろうか。突如として気が狂わんばかりに異常な行動をとる。その後、意識を失う。何の病気かという明確な説明はない。ただ、雷に出会うまでの斉道の陰鬱さは表情から伝わってきた。

雷と斉道の関係はどうなるのか。決して成就するはずのない恋愛だというのは最初からわかっていた。斉道に、婿入りの話が来たことが、大きな契機となってはいるが、その話がなかったとしても、二人は決して結ばれることのない関係だったはずだ。

江戸時代の厳しい身分制度の中で、山で育てられた女が、徳川家の殿様と結婚するなどありえない。ふと思ったのは、ある程度の権力がある斉道ならば、雷を囲うこともできただろう。ただ、本作はあくまでも純愛を貫くスタンスなので、雷が大奥に入ることなどありえないのだろう。

ドラマチックなラストとなってはいるが、結局のところ、身分の違いに苦しむ恋愛物語のラインははずれていない。斉道の相手が山で育った女ということが差別化になっている。普通の村娘であっても、徳川家の殿様と恋愛など許されるはずがない。

村娘よりもさらに強烈な、山で育った娘となると、周りの反対はすさまじい。斉道の教育係である男が、責任を感じて切腹するシーンは強烈だ。斉道にしても、まさか切腹までするとは考えていなかったのだあろう。斉道の驚愕の表情が眼に焼きついている。

身分の違う二人の恋愛物語だが、その身分の差がとてつもなくでかい。



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