ラブソファに、ひとり 


 2014.5.12     女性の気持ちはわからない 【ラブソファに、ひとり】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

短編集。程よい長さで、ふんわりと言いたいことを言う感じだろうか。表題作である「ラブソファに、ひとり」は、まさに30代中盤の女の悩みを作者が代弁しているようだ。男からすると、制限時間のあることほど焦りを感じてしまう思えてくる。日々、自分の価値が下がっていくと感じながら結婚相手を探すのは、実は大変なストレスではないのか?と思えてしまう。

ひと昔前の負け犬ではないが、35歳を過ぎた女性の結婚できる確率というのは数パーセントらしい。結婚したいと願ったからといって、すぐにできるわけではない。だけど、妥協はしたくない。複雑な心境だが、男からすると勝手なことだがかわいそうに感じてしまう。同年代の女性が読めば共感できるのだろうか。

■ストーリー

女、独身、35歳。25年ローンでマンションを買ったものの、自分が本当に欲しかったものは別だと気づき―。恋に落ちる瞬間のときめき、非日常の浮遊感。このうえなく贅沢に薫る、ラブストーリーの花束。当代一の名手が紡ぐ、極上恋愛短篇集。あなたもきっと、恋に一歩、踏みだしたくなる、幸せの処方箋9レシピ。

■感想
「真夜中の一秒前」の状況を想像したら、ドキドキが止まらない。日付が変わった瞬間、最初に目にした人と結婚する、なんてことを言われたら、普通の心境ではいられない。飲み会の席で、12時すぎることは確実となったとき、自分の結婚相手は目の前の4人に絞られる。

誰でも良いのか?と疑ってしまうが、それが運命ならば受け入れるしかないのだろう。もし、自分だったらと考えた時、一瞬頭に思い浮かんだのは、気になる人と最初に出会えるように、変な仕掛けをしてしまいことだ。このあたり、男と女の違いだろうか。

「夢の香り」は恋愛小説ではないが、一番印象に残っている。昔の同僚と久しぶりに出会ったら、同僚は夢を追いかけていた…。自分が守りに入った状況でありながら、昔夢を語り合った仲間が、変わらず夢を追いかけ続けていると、根拠なく負けたような気になってしまう。

守りの人生が悪いとは思わない。それなりの幸せがあるのは確かだが、夢を追いかける人にあこがれてしまう。自分にないモノを求めているのだろうか。本作が一番共感でき、心に残っている。

「ハート・オブ・ゴールド」。女は失恋して一人で沖縄に、そこで4人の人物に出会ったのだが…。沖縄という土地は解放感にあふれ、俗世間のしがらみからすべてを解放してくれるような力がある。強烈なインパクトはないが、沖縄での共同生活というのは妙な魅力がある。

ルーチンワークだけの都会人にとって、沖縄の解放感は代えがたいもののように思えてくる。恋に破れた者がやってくる土地としてふさわしいかどうかわからないが、気分がすっきりすることは間違いないだろう。

恋愛小説の、特に女性の気持ちに共感するのは、だんだん難しくなってきているような気がした。



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