おかえり、はやぶさ


 2014.7.16     宇宙事業は失敗の積み重ね 【おかえり、はやぶさ】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
小惑星探査機のはやぶさが、無事地球へ戻ってきたことを感動的に描いている。一般人にとっては、はやぶさが帰ってきた、くらいの印象しかないだろう。現実には、はやぶさの前に”のぞみ”というプロジェクトが失敗し、はやぶさも途中で様々なトラブルにより、一時は電波が途切れ行方不明になっていた。そんなはやぶさプロジェクトの知られざる状況を、多少のフィクションを交えながらドラマチックに描いている。

はやぶさの帰還を病気の母親の状況になぞらえたり、途中、かなり強引に思える部分があるが、それでも危機的状況の雰囲気はよくでている。小さな研究室でPCが並ぶ中、ひたすら電波を探し続ける。ラストの感動は、演者の派手な喜び方で伝わってきた。

■ストーリー

人類初のプロジェクトへの期待と、人々の想いをのせて、2003年5月9日、小惑星探査機〈はやぶさ〉が打ち上げられた。 〈はやぶさ〉のエンジニア助手・大橋健人は、失敗に終わった火星探査機〈のぞみ〉のプロジェクト責任者の父・伊佐夫への反発もあり、〈はやぶさ〉の成功への想いが人一倍強い熱血漢。

つい周りとも衝突しがちの健人だが、伊佐夫に憧れて宇宙研究を志した新米理学博士・野村奈緒子や、プロジェクトメンバーたちと共に、エンジンからの燃料漏れ、地球との通信途絶、4基のメインエンジンの全停止など様々な〈はやぶさ〉の困難を乗り越える中で、チームの一員として成長していく。

■感想
はやぶさプロジェクトは、一般人はほとんど認識していないだろう。小惑星から微小の砂を持ち帰ったという功績がどの程度すばらしいのかもよくわからない。ただ、困難さは伝わってきた。4つあるエンジンのうち、3つまでもが不調で、電波も途切れがち、燃料漏れに、その他さまざまなアクシデント。

常識的に考えれば、もっと早く諦めていても良いのだろう。それを、無茶と思われるアイデアを実現し、はやぶさをなんとか地球へ帰還させようとする。驚いたのは、いちエンジニアの斬新なアイデアがそのままあっさりと採用される部分だ。

出演者たちは有名人ばかりだ。ほんのちょい役であっても、有名俳優が演じている。そこにどれだけ意味があるかわからない。商業的にヒットするのは難しいだろう。テーマがテーマだけに、一般人にそれほど興味をいだかせるものではない。

ただ、はやぶさの偉業を広く知ってもらいたいがために、本作を作ったのだろう。はやぶさ関連の映画は他に2作存在するが、本作だけが少し毛色が違うらしい。過去に失敗したプロジェクトを引き合いにだし、宇宙事業は失敗を積み重ねることで成功をつかんできた、ということをメインにおいている。

病気の母親の回復や、親子二代にわたる宇宙への挑戦など、純粋なはやぶさ以外の部分にも力が入れられている。子供たちに対しても諦めないことの重要さを解いている。はやぶさのプロジェクトがまさに一度はすべてが終わりだと思われた状況から、諦めない心により復活したことから、まさにうってつけのテーマなのだろう。

純粋なはやぶさに対する愛情という面では、もしかしたら他の2作品には負けるかもしれない。が、失敗をバネにして成功を手にしたという部分は、本作が一番かもしれない。

世間では酷評されているようだが、はやぶさの偉業を知るとっかかりには良い作品だ。



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