小川の辺


 2014.4.28    侍のストイックな肉体 【小川の辺】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
親友と闘わなければならない武士の思い。脱藩した親友の討伐命令を受けた朔之助は、妹の夫である佐久間を討ちに向かう。生真面目な武士である朔之助。常に背筋を伸ばし、藩命を守る男。ストイックな武士である朔之助を、現実でもストイックな東山が演じるのだが、これがすこぶる合っている。

厳しい物言いをするのだが、表情の柔らかさで棘が消える。が、鍛え抜かれた肉体と、常に口元を引き締めたその表情は、武士の厳しさを表現している。そして、親友との対決はすさまじい。実の妹すらも切りかねない迫力。物語全体としては、朔之助が旅をし、親友と対決するというただそれだけの物語なのだが、侍のストイックさが、これでもかと表情で表現されている。

■ストーリー

海坂藩士・戌井朔之助(東山紀之)が受けた藩命は、親友の佐久間森衛(片岡愛之助)を討つこと。藩政を痛烈に批判して脱藩した佐久間への裁きだった。民を想って正論を訴えた友を斬らねばならぬのか-朔之助の心は揺れた。しかも佐久間は、妹・田鶴(菊池凛子)の夫。

田鶴は武士の妻として、手向かってくるに違いない。妹を斬ってでも主命に従えと諭す父・忠左衛門(藤竜也)に、涙を流す母・以瀬(松原千恵子)。妻の幾久(尾野真千子)は夫の身を案じながらも、気丈に振る舞う。

■感想
朔之助と佐久間は親友であり、お互い切磋琢磨し剣の腕も互角。定番的だが、藩命により親友と闘う葛藤と、実の妹の悲しみを考え、悩む朔之助。ただ、本作の根底にあるのは、武士は藩の命令に忠実だということだ。父親に相談し、いざとなれば妹を討っても構わないと言われる。

逆にあれこれ口をはさむのは女ばかり。このあたり、男尊女卑ではないが、男の一本すじの通った考え方と、女の未練がましい考え方が強くお互いを対比して表現されている。本作はとことん朔之助を格好よく見せる物語だ。

朔之助は佐久間を探すために旅にでる。旅の途中で幼いころの妹の姿を思い浮かべる。男勝りな妹として描き、朔之助が佐久間を切った際には、妹が向かってくるかもしれないと考える。朔之助の心の葛藤と、藩命を守るという強い決断がみなぎる場面だ。

そして、旅の間と佐久間と出会った際にも、引き締まった表情は変えない。取り乱すことなく、落ち着き払いゆっくりとした動作で目的を達成する。心の葛藤など表情に表すはずもなく、無表情の中にも強い決意を感じることができる。

朔之助と佐久間の対決は圧巻だ。それまで練習試合では一勝一敗。決着イコール死がまっている世界での戦いはすさまじい。ひりつくような神経戦。戦いの前には、東山の鍛え抜かれた肉体がこれでもかとアピールされ、鉢巻を巻く姿は美しい。

東山は、まさに現代の武士と言わんばかりのストイックさを持ち合わせている。戦いの決着がつくと、やけにあっさりと終わったように感じるが、東山が演じる武士の立ち姿ばか
りが強烈に印象に残っている。

単純な物語だが、役者によってストイックさが増している。



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