のぼうの城


 2014.5.28     飄々としたサムライ 【のぼうの城】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
判官びいきではないが、圧倒的勢力に対抗する小さな勢力は応援せずにはいられない。そして、うつけ者や周りから馬鹿にされていた”のぼう様”が城を守ることになると、その行動に心打たれてしまう。豪華な出演陣で、チョイ役にもそれなりの有名人が演じているのに驚かされる。映像的にも豪華で金がかかっているのがよくわかる。

のぼう様の突飛な行動も、なんらかの意味があり、事態を好転させる。圧倒的不利な状況となり、絶体絶命となっても変な希望が持ててしまう力がある。弱きを助け、強きに立ち向かうその姿は、定番かもしれないが感動してしまう。周りの助けがあってのことだが、のぼう様の変なカリスマ性も見逃せないところだ。

■ストーリー

天下統一目前の豊臣秀吉に唯一残された敵、北条勢。周囲を湖で囲まれた「浮き城」の異名をもつ「忍城(おしじょう)」もその一つ。そんな中、忍城ではその不思議な人柄から農民たちから“のぼう様(でくのぼうの意)"と呼ばれる、成田長親(なりた ながちか)が城を治める事に。

長親に密かに想いを寄せる甲斐姫(かいひめ)。戦に強く「漆黒の魔人」と恐れられる丹波。丹波をライバル視する豪傑・豪腕の和泉(いずみ)。`軍略の天才'を自称する若侍、靱負(ゆきえ)。迫りくる天下軍に緊迫する仲間たちを前に、「北条にも、豊臣にもつかず、皆で今までと同じように暮らせないかなあ~」と呑気な長親だが・・・。

■感想
敵も味方も、それなりに気持ちの良い侍ばかりなので、後味はすこぶる良い。城を攻める石田光成であっても、最初は功を焦るおろか者な扱いかと思いきや、そうではない。山田隆之が演じる参謀役の言葉を無視し、独自の考えを貫き通すが、最後は人情味あふれた考えを示す。

のぼう様の不可解な動きに惑わされながら、部下たちを掌握し、秀吉からのプレッシャーを受ける。結果を出すことを求められた、悩める中間管理職のように見えてしまう。

のぼう様の周りにいる武将たちが良い。それぞれ憎まれ口をたたきながら、最後はのぼう様に協力する。のぼう様のことを、表面上は馬鹿にしていながら、心の奥底では信頼しているということだ。劣勢に立たされた戦いであっても、百姓たちを守り戦い続ける。

どんな窮地に立たされたとしても諦めない心。普通ならば、怖くて逃げだしたくなる状況でありながら、立ち向かうその姿は、のぼう様の感動とは違う感動をおぼえてしまう。この武将たちの存在があってこそ、のぼう様のキャラが活きる。

百姓たちにもバカにされ、家臣たちにはうつけ者扱いののぼう様。が、なぜか周りに好かれ、突拍子もないことを言っても周りがフォローしてくれる。組織をまとめる上役としては頼りないのだが、なぜか周りががんばってしまう典型かもしれない。

飄々とした表情と、甲高い声。のぼう様の役を能楽師の野村萬斎が演じるのは、まさにはまり役だ。頼りなさげにあたふたした姿はすばらしい。かと思えば、交渉では凛とした声で自分の主張を通す。本作は、配役がこれ以上ないほどすばらしい。

のぼう様のキャラクターを、こうもうまく演じられる役者は少ないだろう。



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