2014.8.18 間抜けな感じが良い 【謎解きはディナーのあとで3】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
シリーズとしてこなれた感がある本作。お嬢様、執事、風祭警部。この三人がおりなす定番的な雰囲気は、ワンパターンでありながら安心できる流れではある。風祭警部がミスリードし、お嬢様がトリックを検討するも、解決にはいたらない。最後に、執事がお嬢様に暴言を吐きながらすべてを解明する。
ポイントは執事が礼儀正しく、敬語でお嬢様に丁寧に暴言を吐く部分だろう。そのことに対してお嬢様が一瞬気づかないが、思い返して怒る。この間抜けな感じが良い。本作では今までは割とオブラートに包まれていた影山の暴言が直接的で、悪意があるような暴言すらある。エスカレートしていく暴言の数々を読むのも本作の楽しみのひとつかもしれない。
■ストーリー
宝生邸に眠る秘宝が怪盗に狙われる?体中から装飾品を奪われた女性の変死体発見?続々と発生する難事件に、麗子ピンチ…しかしながら「お嬢様は無駄にディナーをお召し上がりになっていらっしゃいます」影山の毒舌と推理は絶好調!そして、ラストシーンでは麗子と影山、風祭の3人の関係にも大きな変化が訪れて―!?大人気ミステリ第3弾。
■感想
「この川で溺れないでください」は、陸に上がった溺死体の謎を解く物語だ。メインのトリックについては、あまり印象に残らない。本作では風祭警部イジリが強烈にパワーアップしている。真っ白いスーツで捜査をする刑事。溺死体のチンピラが、風祭と同じような服装をしていたことから…。
自分の服装のセンスを風祭が気づき始める部分が面白い。チンピラと同じセンス。チンピラが素晴らしいセンスの持ち主ではなく、自分がおかしいと気づき始める。強引なようでいて、人の意見を取り入れる風祭がなんだか良い。
「怪盗からの挑戦状でございます」は、いつものメンバー以外に御神本という宝生家に使える探偵が登場し、さらには怪盗レジェンドなる謎の泥棒が登場する。メインキャラ+今回登場したキャラで、かなりキャラクターの飽和状態となっている。新キャラたちは、当然のように強烈な個性をしている。
どこかで見たような名探偵であり、ステレオタイプの怪盗である。そして、その登場の仕方や、盗む物につてまで細かく突っ込んでいる。さらには影山が麗子に対して「もっと頭を使え」というのを丁寧な言葉で告げる。それが丁寧すぎるため、余計失礼に感じさせるのが面白い。
「殺人には自転車をご利用ください」は、純粋にミステリーとして面白い。アリバイトリックであり、殺人現場から容疑者宅まで自転車で急げばギリギリ間に合う距離。容疑者は元競輪選手で…。アリバイを想定したものとは、違うアプローチで崩していく。そして、そのトリックがしっかりと考えられている。
殺人現場の死体の状況が、実はすべてを物語っていた。風祭と麗子がいつまでたっても真相を解明しないことに影山が次第に苛立ち始めるのは、本作が初めてだろう。
シリーズとして一旦終了のようだが、続きがあれば読んでみたい。
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