長い家の殺人 


 2014.2.8    島田荘司風? 【長い家の殺人】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ミステリーを読み慣れた人ならば、トリックをある程度事前に予想するだろう。そういった意味ならば、本作は予想できないトリックだ。が、そもそもの事件に対して不可解な状況という印象が薄い。死体消失ミステリーだが、物理的に人が持ち運ぶことは可能なので、不可能殺人ではない。そのため、ミステリーのルールに反するが、まったく別の、行き当たりばったりの犯人の仕業というオチも可能だ。

不可解な状況であれば、種明かしに興味を持つがそうでないと、それほど知りたい欲求は強くない。そうは言っても、トリックは盲点をついたもので、驚くことは間違いない。ギターのコードの暗号については、小難しくてよくわからなかったが、驚きはある。

■ストーリー

消失死体がまた元に戻る!?完璧の「密室」と「アリバイ」のもとで発生する、学生バンド“メイプル・リーフ”殺人劇―。「ミステリー史上に残ってしかるべき大胆なアイデア、ミステリーの原点」と島田荘司氏が激賛。この恐るべき謎を、あなたは解けるか?大型新人として注目を浴びた鮮烈なデビュー作。

■感想
死体が消失し、容疑者たちは完璧なアリバイとなる。定番的な流れだが、登場人物たちの中に犯人がいるという前提があってこその不可能な状況であるだけで、物理的に不可能なわけではない。通りすがりの人物が死体を運び出すことが可能であるので、物語の不可解さというのは少ない。

バンド仲間が死に、バンド内に犯人がいるというのは定番だ。ただ、動機が不明で、手段もわからないとなると、種明かしは気になってしまう。騙されたという感覚はないが、盲点をつかれたのは確かだ。

本作では探偵役としてある人物が登場するのだが、突然出てきたというイメージが拭い去れない。ドイツへ旅した元バンドメンバー。なぜドイツに?なぜそれほど冴えた推理ができるのか?とりたてて理由の説明はないのだが、強引に探偵役として解決してしまう。

御手洗潔的な雰囲気を持ち合わせており、すべてが完全に解明されるまで、中途半端な状態では種明かしをしない。このあたり御手洗と同様で、読者はモヤモヤしたまま物語を読みすすめることになる。この引きの強さはポイントかもしれない。

トリックは盲点だ。作中で主人公が感じたのと同じ、「そうだったのか」という驚きがある。大掛かりなトリックだが、それが不自然にならないような準備と偶然の要素が付け加えられている。かなり綱渡り的な出来事のはずが、終わってみればすべて計画どおりという奇跡のような事件だ。

トリックにしても、ありそうでないトリックだ。誰もが一度は考えるのだが、それを魅力的なミステリーへ作り上げることが難しい素材なのだろうか。作者のアイデアとチャレンジ精神は立派なものだ。

作者が師事する島田荘司作品に似てくるのはしょうがないのだろう。



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