2014.1.28 この世に存在しないはずの花 【夢幻花】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
黄色いアサガオにどんな意味があるのか。この世に存在しないはずの黄色いアサガオを中心に事件は動き出す。物語はなかなか全容が見えてこない。水泳を諦めた元オリンピック候補生。突然自殺をとげたバンドマン。何かしら怪しい動きをする警視庁の男。花を趣味で育てていた老人が殺される事件が発生し、謎の黄色いアサガオの画像をブログにのせたことで、謎の組織が動き出す。
黄色いアサガオにはどんな秘密があるのか。それぞれのキャラクターが黄色いアサガオだけを頼りに右往左往するため、読者は同じように不可解なまま物語を読み進めることになる。結末はシンプルだが、相変わらずオチに向かうまでの謎の引っぱり方がすばらしい。黄色いアサガオの謎が気になり、ページをめくる手を止めることはできない。
■ストーリー
黄色いアサガオだけは追いかけるな―。この世に存在しないはずの花をめぐり、驚愕の真相が明らかになる長編ミステリ。
■感想
タイトルから何かしら連想するものはある。それでも、冒頭、昭和初期と思われる時代設定から凄惨な事件が起こる。その後、現代へとうつり黄色いアサガオにまつわる事件が起こる。この世に存在しないはずの花。となると考えるのは、遺伝子組み換えによる人工物か、それとも突然変異なのか。
何も知らない登場人物たちが、黄色いアサガオを珍しいと思うだけで終えてしまう。一方、黄色いアサガオを探し求める謎の組織の存在も…。決定的な事実が何かを伏せたまま物語が進むため、気持ち的にモヤモヤしたまま読み進めることになる。
黄色いアサガオを追い求める一人の男。蒲生家の長男であり、警視庁に勤務する男は、怪しげな雰囲気を漂わせている。弟には何をやっているのか怪しまれながら、法律を超えた使命を受けたように、黄色いアサガオに執着する。警察組織全体が関わっているのか、それとも個人の問題なのか。
少年時代から朝顔市に顔をだし、熱心にアサガオを見ていた描写からすると、何かしら感じないわけにはいかない。蒲生家の宿命とはいったい何なのか。何も知らない蒲生の弟たちが探し求める情報には、読者も同じように驚く新事実ばかりだ。
ラストはそれまでの引きの強さからすると、ある程度想定の範囲内の出来事だった。ただ、過去の因縁の話は衝撃的だ。蒲生家に伝わる宿命。それを長男が受け継ぎ、次男は…。昨今の原発事故までも物語に取り入れ、原子力の研究について、作者なりの意見が述べられている。
原発依存反対を叫ぶのは良いが、廃炉にするための技術が必要だという。原発を維持し続けるよりも難しい作業には、新たな技術者が必要だ。原発関連の技術者というと世間から白い目で見られそうだが、必ず必要な技術だという作者なりの意見には、納得せざるお得ない。
謎を引っぱる力はすばらしい。
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