ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


 2014.10.1      9.11の絶大な影響 【ものすごくうるさくて、ありえないほど近い】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
9.11の事故により父親を失ったオスカー。父親の残した手がかりを探る物語なのだが、オスカーの神経質そうな表情が強烈だ。もし、自分が小学生で、オスカーが同級生にいたら、友達になりたくないタイプだ。論理的で言っていることは正しいのだが子供らしくない。屁理屈ばかり言う、体の弱い、典型的な頭でっかちタイプだ。

そんなオスカーは神経質ながら、父親の残した秘密を解明するために外にでる。見ず知らずの人の家を訪ね、父親が残したカギの鍵穴を探す。オスカーの必死な行動と、9.11で父親を失うという悲劇が物語を盛り上げている。後半に登場する、祖母の間借り人との関係は良い。小生意気なオスカーが老人を従えるシーンが印象的だ。

■ストーリー

突然、理不尽に大切な人を失った悲しみ――9.11の事故により、オスカーの最愛の父の命は奪われてしまう。やがて彼は、父の残した言葉に従い、一本の鍵の穴を探す旅に出る。ニューヨーク中を訪ね歩く中で謎の老人が同行者となり、いつしかオスカーの辿った軌跡は、人と人とをつなぐ大きく温かい輪になっていく――。

■感想
オスカーの行動には必死さがみなぎっている。知らない人と話のは苦手。外に出るのも苦手。公共の交通機関は恐ろしくて乗れない。外出時は、常にタンバリンを鳴らしながら歩く。見るからに神経質で小生意気で口だけのオスカーが、必死になる姿は見る者を惹きつける。

父親は、息子に考えて行動させることを強いていたので、その延長線上にオスカーの探索があるように思えてくる。父親が残したカギにはどんな秘密があるのか。ブラックという名前だけを頼りに探し周る姿は、明らかに普通ではない。が、それに没頭するオスカーの気持ちもよくわかる。

オスカーはパパっ子だ。それゆえ、父親が死んでからの母親との関係はよくない。母親に内緒で鍵穴探索の旅にでるオスカー。どんな苦難にぶつかろうと、邪険に扱われようと、あきらめない。祖母の家の間借り人と偶然知り合い、一緒に鍵穴を探すのは秀逸だ。

この間借り人が声を出せず、筆談しかできないことも、変化をもたらしている。老人ゆえに何かとオスカーの調査の邪魔になるが、それでも協力して鍵穴探しを続ける。老人のなんとも言えないオスカーを見つめる表情が、物語を悲しくしている。

のちに、間借り人の正体は判明するのだが…。9.11という出来事が、アメリカ人にとってどれだけ大きな出来事だったかわかる作品だ。オスカーが見ず知らずの人を訪ねても、9.11で父親が死んだと口に出した瞬間に、相手は憐れみの視線をオスカーに送り、抱きついてくる。

この感覚がアメリカ的だ。神経質なオスカーが最後まで探索を続けた結果、鍵穴を見つけることができるが、そこに望んだ結末はない。父親からオスカーへの熱いメッセージを期待していた人は、物語の流れに不満になるだろうが、その後、多少のフォローがあるのが救いだ。

9.11の心の傷の大きさを表現した作品だ。



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