水を抱く 


 2014.3.7    軽めな官能小説だ 【水を抱く】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ネットで出会った女は、性に溺れる女だった。特殊な性癖をもつ女ナギに振り回される俊也が様々な経験をしていく。軽い官能小説と言えば良いのだろうか。ポイントは、ナギがなぜ簡単に男と寝る女になったのか、という部分だろう。あっさりとした出会いから、ナギに官能の世界へ連れ込まれどっぷりはまる俊也。ナギと深く付き合うが、最後の一線は越えさせてもらえない。

生殺しのようだが、俊也の苦悩はわかる。特殊な女と気づきながら離れることができない哀れな男。ナギと付き合っているがためにストーカーにまで狙われ、踏んだり蹴ったりの俊也。なぜそこまで俊也がナギにはまるのか理解できないが、官能シーンが目白押しなので、強引に納得するしかない。

■ストーリー

性に溺れて生きるしかない女と、ともに溺れる覚悟をきめた男。白昼の路上、夜の渋谷、新宿のクラブ、バーのテーブルの下で。剥き出しの欲望を振りかざし、凶暴なまでの快楽を貪る年上の女・ナギ。彼女にふれて、ぼくは全てを変えられた。その女をしばる過去が何であれ、構わない。真っ暗な性の闇に堕ちてもなお、ナギとつながりたい―。

■感想
出会った男とすぐに寝てしまう女ナギ。なぜナギは性に溺れたのか。俊也とナギの関係は、濃密でありながらドライだ。ナギが赤の他人と寝ようが受け入れる俊也。それでいて俊也はナギを抱いていない。不自然な関係であり、俊也からするとデメリットばかりだが、俊也はナギと繋がりを断とうとしない。

ナギに依存する俊也は、壊れているようにすら思えてくる。ナギのせいでストーカーに追われたとしても、ナギを諦めない。ナギの異常さもそうだが、俊也の心境はどうしても理解できなかった。

俊也が仕事上で関係をもつ病院の院長も異常な性癖をもっている。仕事上、重要な人物なので我慢して付き合う俊也だが、そこにサラリーマンの悲しさを感じずにはいられない。変態院長の要求はナギを抱かせろというお決まりパターンだ。それを俊也は飲むのか…。

やはり二人の異常な関係というのは、理解できるものではない。そもそもの出会いがネットであり、そこから強い繋がりを築けた理由が不明だ。物語全体として、軽い官能小説風な描写がメインであり、ストーリーの必然性をあまり意識しなければ問題ないのだろうが…。

ナギの秘密は後半に明らかとなる。ナギが結婚していた過去と、その後の出来事。まさかここへきて東日本大震災が絡んでくるとは思わなかった。それらしい理由が説明されているが、到底納得できるものではない。そもそもナギには、性に奔放な素養は間違いなくあったはずだ。

それが不幸な出来事からタガが外れ、より性に溺れるようになったにすぎない。哀れな俊也は、答えを知りながら、その後、ナギから離れようとはしない。ナギだけでなく、実は俊也もかなり異常なのだと最後に気づいた。

本作は官能小説として読むべきなのだろう。



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