マタニティ・グレイ 


 2014.4.11    妊娠出産と仕事の両立は? 【マタニティ・グレイ】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

子供をつくるつもりのない夫婦に妊娠の知らせがとどく。仕事を持つ女性が妊娠した場合に直面する問題を、作者なりに描いている本作。あいかわらず薄っぺらい印象はあるのだが、世間の流れをすぐに吸い上げるスタンスはすばらしい。弱小出版社に勤務する千花子は、自分の会社に産休制度がないことに愕然とし、フリーカメラマンである夫の不安定な収入だけで暮らすことに不安を覚える。

望まない子供だったのは、ほんの一瞬だけ。仕事と出産の両立に向けて、前向きに動き出す千花子のバイタリティには圧倒されてしまう。ただ、これほどうまくいくのか?という思いもある。収入の問題を抱えていながらも、それなりに裕福な生活を送っているように思えたのは自分だけだろうか。

■ストーリー

おおらかな夫、お気に入りのマンション、やりがいのある仕事。しかし編集者の千花子は、予定外の妊娠を機に、正面から人生の見直しを迫られる。戸惑いながらも出産を決意した千花子だったが……・

■感想
作者が描けば、妊婦の物語もおしゃれになるのだろう。特徴的なのはやはり、妊婦として出産のことだけを考えるのではなく、仕事と自分のプライベートの充実も合わせて求めているということだ。自分らしさを失わないとでもいうのだろうか。

編集の仕事にやりがいを感じ、出産後も復帰することを望む千花子。もしかしたら、千花子の恵まれた状況に反感を覚える女性もいるかもしれない。物事はそうなんでもうまくいくとは限らない。出産するために仕事を諦める人は数多くいるだろう。当然、作中でもそれは語られていることだ。

物語として衝撃的なのは、切迫流産関係だ。これはしょうがないことなのだろうが、望んでもなかなか子供ができない人に限って、不幸がやってくる。結局、千花子だけがすべてを手に入れたようにハッピーエンドで終わっている。

物語の特性上、妊娠から出産までをとり上げているので、その先にさらに大変な育児があるということが書かれていない。小さな問題はありながらも、自分らしく、妊娠中もあちこちでかけ、楽しむことを忘れない。非常に充実した妊婦生活だと思えてしまう。

男なので、当然、出産経験はない。それでも、自分の奥さんなどを見ると、妊娠出産の大変さはよくわかる。そして、男は何もできないということも…。本作では、ことさら男が何もできないことを強調している。それは真実なので、なんの文句もない。

妊娠、出産という一大イベントの場合、男のサポートは必要だが、正直、いなくても良いというのが本音だろう。邪魔するくらいなら…という考え方も?本作を読んで、出産未経験の女性がどのように感じるのかが気になるところだ。

男は蚊帳の外にならないよう、気を付けなければならない。



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