クレアモントホテル


 2014.12.26      老人ホーム的ホテル 【クレアモントホテル】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
人生の終わりが見えてきたパルフリー夫人は、クレアモントホテルに一カ月間滞在することにした。クレアモントホテルは、夫人が想像したような高級ホテルではなく、まるで日本のビジネスホテルのようにこじんまりとしていた。そして、ホテルに長期滞在する人々はみな老人だった…。さながら老人ホームのようなホテルだ。

変わらないホテル生活。新入りに対しての興味が尽きることはない。まさに家族が面会にやってこない老人ホームか病院のような雰囲気だ。パルフリー夫人が偶然出会った小説家の青年との交流と、クレアモントホテルの老人たちとの交流が見所だ。心温まるようであり、姥捨て山的な雰囲気を感じる不思議な作品だ。

■ストーリー

ロンドンの古い街角で孤独な老夫人と青年が出会う。ふたりのむつまじい交流の日々──。あわただしい時代から取り残されたようなホテル、クレアモント。人生の終着点が近づいた人たちが集うこのホテルに、パルフリー夫人がやってきた。寂しい住人たちはいずれやってくるという夫人の孫を心待ちにしているが、なかなかその気配がない。困った夫人は、路上で助けてくれた小説家志望の青年に孫のふりをしてもらうことに……。

■感想
パルフリー夫人はクレアモントホテルを高級なシティホテルとイメージしていたのだろう。クレアモントホテルはさびれたホテルであり、ディナーに正装して参加すると逆に浮いてしまう。特殊な雰囲気のあるクレアモントホテルでの生活にも、いつのまにかなじんでしまうパルフリー夫人。

それにしても、あえてなのだろうが、個性的な面々が集うホテルはすさまじい。他人にあからさまな関心を示す人や、常に夫婦で何事か相談している者たち。介護付き老人ホームと言っても過言ではない雰囲気だ。

夫人は孫に何度も連絡するが、面会に来ない。老人ホームや病院と同じく、頻繁に面会者が現れる人は、周りからうらやましがられるようだ。パルフリー夫人のみじめな気持を癒してくれるのが、偶然出会った小説家志望の青年だ。美形だが貧乏で常にボロボロの服を着る。

知的な会話や見栄えの良さからホテル内の住人の評判も上々。夫人はつい青年のことを孫と偽ってしまう。孤独を感じる老人が繋がりを求め若者と交流しつつ、自分の自尊心も満足させようとする。パルフリー夫人の生き生きした表情がそれを物語っている。

クレアモントホテルに住む個性的な老人たち。老人たちの対比として描かれる若々しい青年。老人たちは金はあるが、どこかさみしい表情をしている。青年と恋人がたわいのないことで楽しそうに笑いあう姿をパルフリー夫人がベンチで眺める場面は、本作の象徴的シーンかもしれない。

実の娘や孫たちよりも、赤の他人である青年やホテルに住む老人たちとの交流が夫人を生き生きとさせる。高齢化社会の現在では、もしかしたら当たり前のように起こっている現象なのかもしれない。

ホテルの住人たちの個性的な振る舞いは、すさまじく印象に残っている。



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